ストレスチェック義務化から10年、中小企業への拡大と今後の展望


2015年12月に労働者数50人以上の事業場に義務付けられたストレスチェック制度が、今年で10年を迎えました。この制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、働きやすい職場環境を作ることを目的としています。当初は50人以上の事業場が対象でしたが、法改正により、今後は50人未満の事業場にも義務化される方向で検討が進んでいます。

中小企業への義務化の背景

近年、仕事上のストレスを理由に精神障害を発症する労働者は増加傾向にあり、特に中小企業における労働者のメンタルヘルス対策の重要性が高まっています。中小企業では、大企業に比べて人員や予算が限られているため、メンタルヘルス対策が遅れている現状があります。今回の義務化拡大は、こうした状況を改善し、すべての事業場において労働者が安心して働ける環境を整備することを目的としています。

 

中小企業におけるストレスチェックの課題と対策

中小企業におけるストレスチェックの実施には、いくつかの課題が考えられます。

  • 実施体制の構築: 人手が少ない中小企業では、ストレスチェックの実施担当者を確保することが難しい場合があります。
  • 費用の負担: ストレスチェックの実施には費用がかかるため、中小企業にとっては負担となる可能性があります。
  • 結果の活用: ストレスチェックを実施しても、その結果をどのように職場環境の改善に繋げればよいかわからないという声も聞かれます。

これらの課題に対し、厚生労働省は、地域産業保健センター等による支援体制の強化や、費用負担を軽減するための助成金制度などを検討しています。また、中小企業でも取り組みやすいように、ストレスチェックの実施方法や結果の活用方法に関するマニュアルを作成・配布する予定です。

 

ストレスチェック制度の今後の展望

ストレスチェック制度は、今後、単にメンタルヘルス不調者を早期発見するためのものではなく、職場環境の改善を通じて、労働者のエンゲージメントを高め、生産性を向上させるためのツールとして活用されることが期待されています。具体的には、ストレスチェックの結果を分析し、部署ごとの課題を明確にし、コミュニケーションの活性化や業務の見直しなどの具体的な改善策を実施することが重要です。また、ストレスチェックの結果だけでなく、従業員へのアンケートやヒアリングなどを通じて、より詳細な情報を収集し、職場環境の改善に繋げることも有効です。

ストレスチェック制度は、すべての労働者が健康でいきいきと働くことができる職場環境を作るための重要な取り組みです。中小企業への義務化を機に、改めてその目的と重要性を認識し、より効果的な活用を目指していくことが、これからの企業に求められるでしょう。

 

引用元:

  • 労基旬報オンライン
  • 企業法務ナビ
  • 厚生労働省