この時期、特に複数事業場でストレスチェックを実施された企業では、労働基準監督署への「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」の作成や提出に追われる担当者の方も多いのではないでしょうか。特に、報告書に記載する人数の数え方や、外部委託時の注意点などは正確な理解が求められます。
当解説記事では、2025年1月から開始された電子申請をはじめ、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書の作成と提出に関する手順やポイントを整理しました。
報告書の提出対象となる事業場と電子申請義務化
心理的な負担の程度を把握するための検査(以下、ストレスチェック)を実施した際、一定の要件を満たす事業場には、その実施状況を所轄の労働基準監督署へ報告する義務があります。また、2025年(令和7年)1月1日施行の改正により、労働安全衛生法に基づく一部の報告書について、電子申請が原則として義務付けられました。これには「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」も含まれており、対象となる事業場は従来の紙媒体ではなく、オンラインでの報告が求められます。
| 項目 | 具体的な内容・運用ルール |
|---|---|
| 報告義務がある事業場の基準 | ストレスチェック制度の実施義務がある事業場は、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。これと同様に、実施後の報告についても常時50人以上の労働者を使用する事業者に義務付けられています。報告書は、1年以内ごとに1回、定期に所轄の労働基準監督署長へ提出しなければなりません。提出時期に厳格な期限はありませんが、各事業場における事業年度の終了後など、定期的なタイミングを定めて提出することが一般的です。また、部署ごとに順次実施しているような場合は、最終の検査が完了した月を「検査実施年月」として記載し、1年分(暦年)の受検状況をまとめて報告します。 |
| 50人未満の事業場における扱い | 常時使用する労働者が50人未満の事業場については、改正労働安全衛生法の施行(2028年見込み)まではストレスチェックの実施は努力義務とされています。そのため、法律に基づく報告書の提出義務もありません。(ただし、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する観点から実施することが望ましく、義務化が開始するまでに試験的に実施するなどの準備が必要です。) |
| 電子申請の義務化 | 事業者側の報告負担の軽減や報告内容の適正化、さらには行政側における統計処理の効率化を目的としています。電子申請を導入することで、窓口へ出向く手間や郵送コストが削減されるだけでなく、入力支援機能による記載漏れや誤りの防止も期待されています。なお、パソコン環境の欠如など、電子申請を行うことが著しく困難な事情がある場合に限り、当分の間は書面での報告も認められる経過措置がありますが、原則として電子申請への移行が必要である点に留意してください。 |
事業場の労働者数と在籍労働者数のカウントについて
ここで注意が必要なのは、労働者数の数え方です。報告義務の有無を判断する際には、正社員だけでなく、パートタイム労働者や派遣先の派遣労働者も含めてカウントします 。一方で、報告書(様式第6号の2)の在籍労働者数欄に記載する人数は、ストレスチェック実施時点での実施義務対象者(常時使用する労働者)のみを記載します 。
| 項目 | 具体的な算出方法・対象範囲 |
|---|---|
| 事業場の労働者数 | 報告義務の有無を判断する際は、正社員だけでなく、パートタイム労働者や派遣労働者も含めて算出します。 |
|
在籍労働者数 (報告書記載分) |
実際に報告書の在籍労働者数欄に記載するのは、ストレスチェックの実施義務対象者(常時使用する労働者)のみです。1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満であるパートタイム労働者や、派遣先の派遣労働者はここには含めません。 |
報告書の具体的な記載項目と留意点
電子申請においても、入力すべき項目は従来の様式第6号の2に基づいています。正確な統計データを反映させるため、以下の項目を正しく把握しておく必要があります。
| 記載項目 | 内容の詳細と注意点 |
|---|---|
| 検査を実施した者 | 産業医や保健師など、実際にストレスチェックの実施者となった者の区分を選択します。 |
| 面接指導を実施した医師 | 産業医や外部委託先の医師など、高ストレス者への面接指導を行った医師の区分を選択します。 |
| 検査を受けた労働者数 | 対象期間内に実際にストレスチェックを受検した実人数を記載します。 |
| 面接指導を受けた労働者数 | 実施者が面接指導の必要があると認めた者のうち、申出を行って実際に面談を受けた人数です。 |
| 集団ごとの分析の実施有無 | 部・課などの単位で集団分析を行ったか否かを選択します。集団分析は努力義務ですが実施が推奨されています。 |
未受検者への対応と報告
ストレスチェックは労働者への受検義務がないため、受検を拒否した労働者がいても事業者の法違反にはなりません。報告書には「実際に受けた人数」を記載すれば足りますが、あまりにも受検率が低い場合は、衛生委員会等で受検勧奨の方法を再検討することが望ましいでしょう。
電子申請の具体的な方法と活用ツール
義務化に対応するための電子申請ルートは、大きく分けて2つ用意されています。
| 申請方法・ツール | 具体的な内容・メリット |
|---|---|
|
「e-Gov電子申請」 ポータルサイトの活用 |
国が運営する電子政府の総合窓口「e-Gov」を通じて申請する方法です。マイページから進捗管理ができ、他の行政手続きと一括して管理できるメリットがあります。初めて利用する場合は、アカウントの作成やアプリのインストールが必要です。 |
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厚生労働省 「帳票印刷に係る入力支援サービス」 の活用 |
厚生労働省が提供する「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を利用する方法です。画面の指示に従って数値を入力することで、適切なフォーマットのデータを作成できます。このサービスからe-Govと連携して直接電子申請を行うことが可能です。 |
人事労務担当者が守るべき情報保護と不利益取扱いの禁止
労働基準監督署への報告事務は、多くの機微な健康情報を取り扱うプロセスの一環です。報告書の提出にあたっても、以下の法的ルールを遵守しなければなりません。
労働者の健康情報の保護
ストレスチェックの結果や面接指導の内容は、労働者の機微な秘密に該当します。報告事務に従事する者は、法に基づき厳重な守秘義務を負います。電子申請のデータ管理においても、アクセス権限を制限し、上司や第三者に情報が漏れないようセキュリティを確保する必要があります。
不利益な取扱いの防止
報告書に記載されるデータはあくまで統計的な数値ですが、その過程で把握した個人の状況を理由として、以下のような不利益な取扱いを行うことは法で厳格に禁じられています。報告事務を行う目的は、あくまで「職場の健康管理状況の把握」にあることを全社的に再確認しておきましょう。
- ストレスチェックを受検しないことを理由とした解雇や契約不更新
- 結果の事業者への提供に同意しないことを理由とした退職勧奨
- 面接指導を申し出たことを理由とした不当な配置転換
派遣労働者に関する報告の特例
派遣労働者のストレスチェック実施および労働基準監督署への報告義務は、原則として派遣元事業者にあります。派遣先事業者は、派遣労働者が派遣元のストレスチェックを受けられるよう配慮する立場となります。ただし、職場環境改善のための集団分析については、実態を把握している派遣先事業者が実施することが望ましいとされています。
ストレスチェック報告書に関するよくある質問
当解説記事では、2025年から始まる電子申請義務化のポイントと、報告書の正確な運用方法について整理しました。最新のデジタルツールを積極的に活用し、法令を遵守しながら円滑な産業保健体制の構築を目指しましょう。電子申請への移行は準備に時間がかかる場合があるため、次回の報告時期に向けて早めの環境整備をお勧めします。
