安全衛生優良企業公表制度と企業による活用法

公開日: 最終更新日: 執筆:一般社団法人メンタルセーフティー推進機構

「安全衛生優良企業公表制度」とは、労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善しているとして、厚生労働省から認定を受ける制度です 。

この制度の根底には、昭和47年に制定された労働安全衛生法があります 。労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています 。

 

参考・引用リンク

厚生労働省:安全衛生優良企業公表制度について

職場のあんぜんサイト:安全衛生優良企業公表制度(自己診断ページ)

1.安全衛生優良企業公表制度とは?「ホワイト企業」の証

この法律で定められた基準をクリアするだけでなく、さらに一歩進んだ積極的な取り組みを行っている企業が「安全衛生優良企業」として認められます 。認定を受けた企業は、厚生労働省のホームページで企業名が公表されるほか、専用の認定マーク(通称:ホワイトマーク)を名刺や自社製品、求人広告などに使用できるようになります 。

2.認定取得が企業にもたらす4つの大きなメリット

認定を取得することは、単に「国からお墨付きをもらう」以上の実利を企業にもたらします。主なメリットは以下の4点です 。

  1. 優秀な人材の獲得(採用力の強化)
    求職者にとって、その企業が「安全で健康に働ける環境かどうか」は重要な判断基準です。認定マークを求人票や広告に記載することで、安心感をアピールでき、人手不足の解消につながります 。
  2. 企業イメージの向上
    「従業員を大切にする企業」というブランドイメージが定着します。これは顧客や取引先からの信頼獲得にも寄与し、最終的には売上の向上にもつながる可能性を秘めています 。
  3. 社員のモチベーションと意識の向上
    国からの認定を受けることで、従業員自身が「自社は安全で健康な職場である」と誇りを持つことができます。これにより、社内の安全意識がさらに高まり、職場環境の改善が加速する好循環が生まれます 。
  4. 労働災害リスクの低減
    認定基準を満たす過程で、必然的に安全衛生管理体制が強化されます。その結果、労働災害の発生を未然に防ぎ、事故による損害や経営リスクを抑えることができます 。

3.認定を受けるための基準:2つのステップ

認定を受けるためには、大きく分けて「必須項目」と「加点項目」の2つの基準をクリアする必要があります 。

ステップ1:必須項目(必要項目)のクリア

まず、企業として「当然に満たしているべき基本事項」がチェックされます。これらは1つでも欠けると認定を受けられません 。

  • 労働安全衛生法等の違反状況:
    過去3年以内に重大な法令違反で送検されていないこと、是正指導に対して未改善の事実がないことなど 。
  • 労働災害の発生状況:
    過去3年以内に法令違反による重篤な労働災害(死亡事故や重大な障害)を2件以上発生させていないこと 。
  • 労働時間の状況:
    直近1年において、月45時間以上の時間外・休日労働を行う労働者の状況が適正であり、月60時間以上の時間外労働者がいないことなどが求められます 。

ステップ2:加点項目(評価項目)で高得点を獲得

必須項目をクリアした上で、積極的な取り組みを点数化します。各カテゴリーで6割以上、全体で8割以上のスコアを獲得する必要があります 。

4.具体的な評価分野:どのような取り組みが求められるか?

評価項目は多岐にわたりますが、特に重要視されるのは以下の分野です 。

1. 健康管理とメンタルヘルス対策

評価項目 具体的な対策内容
健康保持増進計画 企業全体で健康計画を策定し、形骸化させず着実に実施しているか。
メンタルヘルス対策 ストレスチェックの実施、相談窓口の設置、職場復帰支援ルールの策定など。
疾病を抱える労働者支援 治療と仕事を両立できる社内制度の構築(加点対象)。

2. 過重労働防止対策

評価項目 具体的な対策内容
労働時間の適正把握 タイムカード等による適正な客観的管理と、管理者への正確な情報提供。
有給休暇の取得促進 全社的なルールの策定。実績として高い取得率(3年間平均70%以上等)が評価されます。

3. 安全でリスクの少ない職場環境

評価項目 具体的な対策内容
リスクアセスメント 職場の危険源を特定し、それに対する改善措置を講じる手順が確立されているか。
現場の安全活動 KY(危険予知)活動や4S活動など、現場レベルでの継続的な安全活動の実践。

5.認定申請のフローと「自己診断」の活用

「うちの会社では基準を満たしているだろうか?」と不安な場合は、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」にある自己診断ツールを活用しましょう 。

申請までの流れ

  1. WEBサイトで自己診断: 自社の現状を入力し、基準を満たしているか確認します 。
    参考リンク: 安全衛生優良企業公表制度自己診断
  2. 申請書類の作成: 基準を満たしていることが確認できたら、本社を管轄する労働局へ提出する書類を準備します 。
  3. 労働局への申請: 作成した書類を提出します 。
  4. 審査・ヒアリング: 労働局による書類審査やヒアリング調査が行われます 。
  5. 認定・公表: 審査を通過すると認定証が交付され、厚生労働省のサイトに企業名が掲載されます 

6.安全衛生優良企業公表制度に関するよくある質問

Q1. 安全衛生優良企業公表制度、通称ホワイトマークとはどのような制度ですか?
労働安全衛生法に基づき、従業員の安全と健康を確保するために、法令遵守にとどまらない積極的な取り組みを行っている企業を厚生労働省が認定、公表する制度です。認定を受けるとホワイトマークを使用できるようになり、ホワイト企業としての社会的信頼を公的に証明できます。
Q2. 認定を受けることで、企業には具体的にどのようなメリットがありますか?
最大のメリットは採用力とブランド力の向上です。求職者に対し安心して働ける職場であることを厚生労働省のお墨付きでアピールでき、他社との差別化に繋がります。また、ESG投資やSDGsの観点から、取引先や金融機関からの評価が高まるほか、従業員の離職率低下も期待できます。
Q3. 健康経営優良法人(ホワイト500等)とは何が違うのでしょうか?
主な違いは管轄と審査の焦点です。健康経営は経済産業省が管轄し、経営的視点での戦略的な健康管理に重きを置きます。一方、ホワイトマークは厚生労働省が管轄し、労働安全衛生法をベースとした安全管理、過重労働対策、法令遵守について非常に厳格な基準を設けています。ホワイトマークの方が取得難易度が高く、より安全のプロフェッショナルという印象を与えます。
Q4. 認定を受けるための必須条件にはどのようなものがありますか?
過去3年間において以下の要件を満たしている必要があります。
・労働安全衛生法に関連する重大な違反がないこと。
・重大な労働災害が発生していないこと。
・労働基準法違反による送検事例がないこと。
これらをクリアした上で、さらに約80項目の詳細な評価基準をクリアする必要があります。
Q5. 評価基準の中でも、特に長時間労働についてはどの程度厳しい制限がありますか?
非常に厳格な基準が設けられています。例えば、月45時間を超える時間外労働を行わせている労働者が全労働者の一定割合以下であることや、月80時間を超える残業が1人もいないことなど、実態としての働き方がクリーンであることが賃金台帳等のエビデンスを通じて厳しくチェックされます。
Q6. メンタルヘルス対策やストレスチェックに関する評価ポイントはどこですか?
ストレスチェックの受検率が高いことはもちろん、その結果を集団分析し、具体的な職場環境改善に繋げている実績が求められます。また、メンタルヘルス不調者の復職支援プログラムが整備され、実際に産業医と連携して運用されていることも重要な評価対象です。
Q7. 産業医の活動や衛生委員会の実態も、審査の対象に含まれますか?
はい、形骸化していないか厳しく審査されます。産業医が定期的に職場巡視や面談を行っているか、衛生委員会で活発な議論が行われ、その内容が議事録に記録され全従業員にフィードバックされているかといった実効性が確認されます。
Q8. 認定を受けるための申請プロセスは、どのような流れになりますか?
おおまかに以下の流れで進みます。
1. 自社診断:厚生労働省の委託サイト等でセルフチェックを実施。
2. 申請準備:過去3年分の議事録、健診結果、賃金台帳等のエビデンスを整備。
3. 申請:所轄の都道府県労働局へ申請書を提出。
4. 審査:労働局による書類審査およびヒアリング(実地調査を含む場合あり)。
5. 認定:厚生労働省による公表。
Q9. 認定の有効期間はどのくらいですか?また、更新手続きは必要ですか?
認定の有効期間は3年間です。期間終了後も継続してマークを使用したい場合は、改めて更新申請を行い、その時点での最新の基準を満たしているか再審査を受ける必要があります。常に高い水準を維持し続ける継続的な経営努力が求められる制度です。
Q10. 認定を受けた後で、労働災害や法令違反が発生してしまった場合はどうなりますか?
認定基準を満たさなくなった場合(重大な労災の発生や法令違反による送検等)には、認定が取り消されます。取り消された事実は公表されるため、企業イメージへのダメージは甚大です。認定は一度取れば終わりではなく、安全衛生管理を高度化し続けるスタートと捉える必要があります。

安全衛生優良企業公表制度への挑戦は、単なるラベル取得ではなく、自社の安全衛生管理体制をブラッシュアップする絶好の機会です 。

第13次労働災害防止計画では、死亡災害の撲滅やメンタルヘルス対策、過労死防止が重点事項として掲げられています 。こうした国の指針に沿ってPDCAサイクルを回し続けることが、長期的な企業価値の向上につながります 。

まずは自己診断サイトで、自社の現在地を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。