女性活躍推進法と行動計画とは?2026年4月改正のポイントとともに解説

公開日: 最終更新日: 執筆:一般社団法人メンタルセーフティー推進機構

女性活躍社会への移行が加速する中、企業にはこれまで以上に透明性の高い情報開示と、実効性のある取組が求められています。特に2026年(令和8年)4月からは、女性活躍推進法の改正により、中堅・中小企業にとっても大きな転換点を迎えます。本記事では、人事労務担当者や産業保健スタッフの皆様に向けて、女性活躍推進法の基礎知識から、2026年4月改正の重要ポイント、そして義務化される「一般事業主行動計画」の具体的な策定手順までを分かりやすく解説します。

参考リンク:

厚生労働省:女性活躍推進法特集ページ

女性の活躍推進企業データベース

 

栃木労働局:2026年改正に関するお知らせ

女性活躍推進法の概要と企業に求められる役割

「女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)」は、働きたいと願うすべての女性がその個性と能力を十分に発揮できる社会を目指して制定されました。もともと2026年3月末までの時限立法でしたが、社会情勢を鑑み、有効期限が2036年3月末まで10年間延長されることが決定しています。

一般事業主が行うべき4つのステップ

常時雇用する労働者が101人以上の企業には、以下の取組が義務付けられています。

  1. 状況把握・課題分析:自社の女性採用比率や勤続年数、労働時間などの現状を把握。
  2. 行動計画の策定・周知・公表:分析結果に基づき、具体的な数値目標と取組内容を決定。
  3. 労働局への届出:策定した計画を管轄の都道府県労働局へ届け出る。
  4. 情報の公表:自社の女性活躍に関する実績を「女性の活躍推進企業データベース」等で外部に公表。
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【2026年4月改正】情報公表義務の拡大と注意点

2026年(令和8年)4月1日の施行により、特に労働者数101人以上の企業における義務内容が大幅に強化されます。

101人以上の企業で「必須公表項目」が追加

これまで「男女間賃金差異」の公表は301人以上の企業のみが義務でしたが、改正後は101人以上の企業でも「男女間賃金差異」および「女性管理職比率」の公表が必須となります

企業規模 2026年3月まで 2026年4月から(改正後)
301人以上 「機会の提供」から1項目以上

「両立支援」から1項目以上

※男女間賃金差異は必須
左記に加え、公表項目の追加・拡大が義務化
101人~300人 任意の1項目以上を選択 「男女間賃金差異」+「女性管理職比率」+任意1項目以上(計3項目以上)
100人以下 努力義務 努力義務(継続)

女性の健康支援が基本原則に追加

今回の改正では、生理や更年期、不妊治療など、女性特有の健康課題への配慮が法律の基本原則として明確化されました。行動計画の中に「健康相談窓口の設置」や「休暇制度の整備」を盛り込むことが推奨されています。

一般事業主行動計画を策定する4つの手順(実務ガイド)

法定義務を果たすためには、PDCAサイクルを意識した計画策定が必要です。

STEP 1:自社の状況把握と課題分析

まずは「基礎項目」と呼ばれる4つの数値を算出します。数値が低い項目については、「なぜそうなっているのか?」を深掘りし、原因(配置の偏り、職場風土など)を分析します。

  • 採用した労働者に占める女性の割合
  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 各月ごとの平均残業時間などの労働時間の状況
  • 管理職に占める女性労働者の割合

STEP 2:行動計画の策定・社内周知・公表

分析に基づき、以下の4要素を盛り込んだ計画を作成します。策定後は、社内の見やすい場所への掲示やメール送信などにより、非正社員を含むすべての労働者に周知します。

  • 計画期間(2年〜5年程度が望ましい)
  • 数値目標(例:女性管理職比率を15%以上にする)
  • 取組内容(例:管理職候補者向けの研修実施、短時間勤務制度の柔軟な運用)
  • 実施時期(いつから開始するか)

STEP 3:労働局への届出

「一般事業主行動計画策定・変更届」を記入し、管轄の都道府県労働局へ電子申請、郵送、または持参して届け出ます。

※次世代法(くるみん関連)の行動計画と一体的に策定・届出をすることも可能で

STEP 4:取組の実施と効果測定

計画に基づき取組を進め、定期的に数値目標の達成状況を確認します。達成できなかった場合は、次の計画期間での改善につなげます。

「えるぼし認定」取得のメリットと種類

行動計画の届出を行い、一定の基準を満たした企業は「えるぼし認定」を受けることができます。

  • 認定の種類:
    評価項目(採用、継続就業、労働時間、管理職比率、多様なキャリア)の満たし具合により1〜3段階あります。さらに、特に優良な企業は「プラチナえるぼし」として認定されます。
  • メリット:
    1. 採用力の向上:厚生労働省の認定マークを広告や名刺に使用でき、女性が働きやすい企業としてPRできます。
    2. 公共調達での優遇:国や地方自治体の入札において加点対象となります。
    3. 低利融資:日本政策金融公庫の融資制度を低金利で利用できる場合があります。

女性活躍推進法に関するよくある質問

Q1. 従業員数が何名以上の企業が女性活躍推進法の対象となりますか?
常時雇用する労働者が101人以上の企業が対象です。対象企業には以下の4ステップが義務付けられています。
1.自社の女性活躍に関する状況把握、課題分析
2.数値目標を含む一般事業主行動計画の策定
3.計画の公表および都道府県労働局への届出
4.女性の活躍に関する情報の公表。
なお、101人未満の企業については、これらは努力義務となっています。
Q2. 義務化された男女の賃金の差異の公表について、算定方法はどのようになっていますか?
常時雇用する労働者が101人以上のすべての企業に対し公表が義務付けられています。算定は全労働者、正規雇用労働者、非正規雇用労働者の3区分で行い、男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合を算出します。
事業年度終了後、速やかに自社ホームページや女性の活躍推進企業データベース等で公開する必要があります。
Q3. 一般事業主行動計画を策定する際、盛り込むべき数値目標のルールは?
従業員数301人以上の企業は
1.採用した労働者に占める女性労働者の割合など採用に関する項目
2.管理職に占める女性労働者の割合など継続就業、登用に関する項目の両方の区分
から1つ以上の目標を設定する必要があります。101人から300人の企業は、全ての項目の中から1つ以上の目標を設定すれば足ります。
Q4. えるぼし認定にはどのようなランクがあり、取得するメリットは何ですか?
評価基準を満たす項目数に応じて、1つ星から3つ星、およびさらに高い水準のプラチナえるぼしがあります。
取得のメリットは、
1.女性活躍企業としての採用力の向上
2.公共調達での加点評価
3.日本政策金融公庫による低利融資
4.ESG投資の対象としての企業価値向上などが挙げられます。
Q5. 行動計画の策定や情報の公表を怠った場合、どのようなリスクが発生しますか?
現時点で罰金等の刑事罰はありません。しかし、労働局の是正勧告に従わない場合は企業名が公表されるという重大なレピュテーションリスクがあります。また、情報の公表が不十分な企業は採用市場で敬遠されるだけでなく、取引先や投資家からコンプライアンスおよびガバナンスの欠如とみなされる実質的な経営リスクを負うことになります。
Q6. 従業員数100人以下の企業が、法律に基づいた取り組みを行う意義はどこにありますか?
人手不足が深刻な現在、中小企業こそ女性の潜在能力を引き出すことが成長の鍵となります。努力義務であっても計画を策定しえるぼし等を取得することで、大手企業に劣らない採用競争力を得ることが可能です。また、両立支援等助成金の受給要件となっている場合もあり、経営基盤の強化に直結します。
Q7. 女性活躍推進法において、近年注目されている男性の育児休業取得率はどう関係していますか?
女性がキャリアを継続、発展させるためには男性の家庭参画が不可欠なため、男性の育休取得率は女性の活躍を測る重要な指標となります。情報公表項目には男女別の育児休業取得率が含まれており、これを公表することで性別を問わず柔軟に働ける職場環境であることを証明できます。男性の意識改革とセットで進めることが重要です。

女性活躍推進法は、単なる事務的な義務ではなく、深刻化する労働力不足の中で「多様な人材に選ばれる企業」へと進化するための指針です。

2026年4月からは、101人以上の企業において「賃金差異」と「女性管理職比率」の公表が逃れられない義務となります。

まずは自社の現状をデータで可視化し、課題を特定することから始めてみましょう。

  1. 自社の常用労働者数を確認する(派遣労働者は含まず、契約社員やアルバイトの一部を含む)。
  2. 「女性の活躍推進企業データベース」で他社の公表内容を確認する。
  3. 社内の男女間賃金差異や管理職比率を算出してみる。