疲労蓄積度チェックリスト|2023年改正版の使い方・判定の見方・産業保健での活用を解説(PC・スマホ版付き)

公開日: 最終更新日: 執筆:一般社団法人メンタルセーフティー推進機構

「最近なんとなく疲れがとれない」「ちゃんと眠れていない気がする」そんな感覚を持ちながら働き続けている方は少なくないのではないでしょうか。疲労が蓄積した状態を放置すると、脳・心臓疾患や精神障害へのリスクが高まります。そのような過重労働による健康障害を防ぐためのツールとして中央労働災害防止協会が作成し、厚生労働省が周知を行っているのが「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」です。当解説記事では、2023年4月に19年ぶりに改正されたこのチェックリストの概要・改正の背景と変更点・判定の見方・長時間労働者の面接指導での活用方法・家族用チェックリストの特徴・PCやスマートフォンから手軽に使える無料Webツールまでを、人事労務担当者・産業保健スタッフ向けにわかりやすく解説します。


 

💡 この記事でわかること
  • 1労働者の疲労蓄積度チェックリスト(2023年改正版)の全体像や、2004年の初版から19年ぶりに見直された主な改正ポイントがわかります。
  • 2チェックリストの判定スコアや評価基準の見方と、長時間労働者に対する医師の面接指導・日々の産業保健活動における具体的な活用方法が理解できます。
  • 3周囲が労働者の健康状態に気づくための「家族用チェックリスト」の特徴、およびパソコンやスマートフォンから無料で自己診断ができる便利なWebツールの情報が整理できます。

疲労蓄積度チェックリストとは

疲労蓄積度チェックリスト(正式名称:労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト)とは、長時間労働等によって蓄積した疲労の程度を、労働者自身が自己診断するためのチェックリストです。中央労働災害防止協会(中災防)が作成し、長時間労働者の面接指導において疲労の蓄積状況を確認するためのツールとして広く活用されています。

作成の背景と法令上の位置づけ

このチェックリストは、労働安全衛生法第66条の8に基づく長時間労働者への医師面接指導制度と深く関わっています。1か月あたりの時間外・休日労働時間数が80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者に対しては、医師による面接指導の実施が事業者に義務づけられています。

面接指導の実施にあたって、医師が疲労の蓄積状況を客観的・体系的に把握するためのツールとして、中央労働災害防止協会が平成16年(2004年)6月に本チェックリストを公表し、厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署も広く活用を推奨してきました(大分産業保健総合支援センター「2023年改正版周知について」、2023年4月13日)。

チェックリストの種類

疲労蓄積度チェックリストには「労働者用(本人用)」と「家族用」の2種類があります。労働者用は労働者本人が自分の状態をチェックするもので、家族用は労働者の家族が日常の様子から疲労の状態を確認するものです。それぞれ異なる視点から疲労の蓄積状況を捉えることで、本人が気づきにくい変化を家族の目から補完できる設計となっています。

2023年改正版の主な変更点

2023年4月、中央労働災害防止協会は2004年の公表から19年ぶりとなる改正を行い、「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)」として公表しました。改正は「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストの見直しに関する検討委員会」での検討に基づいており、最新の医学的知見と現代の働き方を反映した内容となっています。

2023年改正版で追加された主な項目

今回の改正で追加・変更された主な内容は以下のとおりです(厚生労働省「基安労発0404第1号 令和5年4月4日」・愛媛産業保健総合支援センター周知資料)。

  • 勤務状況の項目
    「職場・顧客等の人間関係による負担」が追加されました。ハラスメントや顧客対応によるストレスが過重労働による健康障害に関与することが認識され、対人関係由来の負担を評価項目に組み込んだものです。
  • 終業時刻から次の始業時刻間の休息時間(勤務間インターバル)に関する項目
    2019年4月施行の労働時間等設定改善法改正により勤務間インターバル制度の導入が努力義務となったことを踏まえ、休息時間の確保状況を評価する観点が加わりました。
  • 自覚症状の項目
    「食欲がないと感ずる」が新たに追加されました。食欲低下は疲労・ストレスの重要なサインであり、メンタルヘルス不調との関連も強い症状として評価項目に組み込まれています(日本メディメンタル研究所、2023年5月)。

これらの追加により、従来の身体的な疲労サインに加え、人間関係によるストレス・休息時間の確保・食欲という現代の労働環境に即した多角的な評価が可能になっています。

2023年改正版の意義

19年ぶりの改正という事実が示すように、今回の改正は単なる細部の修正ではありません。働き方の変化(テレワーク・勤務間インターバル)・メンタルヘルスの視点の強化・食欲という身体サインの追加という3つの柱によって、チェックリストの精度と現代への適用性が大きく向上しています。特にメンタルヘルス関連の項目が追加されたことで、精神的な疲労の蓄積状況についても加味された設問構成となっています(求人ジャーナル産業医サポート、2023年)。

チェックリスト(労働者用)の構成と判定方法

チェックリスト(労働者用・2023年改正版)は「自覚症状」と「勤務の状況」の2つのパートで構成されており、両方の評価を組み合わせて疲労蓄積度を判定します。

疲労蓄積度チェックリストの
評価パート
具体的な評価項目および評価基準の詳細
パート1:自覚症状の評価 自覚症状パートでは、最近1か月の自分の状態について複数の症状項目を確認します。改正版では以下のような項目が含まれます。イライラする、不安だ、落ち着かない、ゆううつだ、よく眠れない、体の疲れがとれない、朝起きたとき、身体がだるい、以前とくらべて疲れやすい、食欲がないと感ずる(2023年改正版で追加)などです。
各項目について「ほとんどない(月1〜2回以下)」「ときどきある(月3〜4回程度)」「しばしばある(週1〜2回程度)」「ほとんどいつもある(週3回以上)」の4択で回答し、回答に応じてスコアを算出します(中央労働災害防止協会「2023年改正版活用ガイド」)。
パート2:勤務の状況の評価 勤務の状況パートでは、最近1か月の勤務実態について確認します。主な評価項目として、1か月の時間外労働時間、不規則な勤務(予定の変更・突発的な業務発生等の頻度)、出張に伴う負担(頻度・拘束時間)、深夜勤務の回数、終業時刻から次の始業時刻間の休息時間(勤務間インターバル)(2023年改正版で追加)、職場・顧客等の人間関係による負担(2023年改正版で追加)などが含まれます。

総合判定とスコアの見方

自覚症状と勤務の状況それぞれのスコアを組み合わせた総合判定表を用いて、疲労蓄積度を0〜7点のスコアで算出します。判定の目安は以下のとおりです(中央労働災害防止協会「2023年改正版活用ガイド」)。

スコア 疲労蓄積度 対応の目安
0点 疲労蓄積なし 現状の維持・引き続きセルフケアを継続
2〜3点 疲労蓄積の可能性あり 生活習慣の改善・勤務状況の見直しを検討
4〜5点 疲労蓄積の可能性が高い 上司・産業保健スタッフへの相談を推奨
6〜7点 疲労蓄積の可能性が非常に高い 速やかに産業医・主治医への相談を推奨

スコアが2点以上の場合は疲労が蓄積されている可能性があり、勤務状況の項目のうちスコアが高い項目(改善が必要な要因)を特定して、具体的な対策を講じることが求められます(中央労働災害防止協会「2023年改正版活用ガイド」)。

なお、糖尿病・高血圧症等の疾患がある方の場合は、症状の影響で判定が正しく行われない可能性があることに留意が必要です(同ガイド)。

家族用チェックリストの活用

家族用チェックリストは、労働者本人では気づきにくい変化を、日常的に接している家族が確認するためのツールです。本人用チェックリストと同様の2023年改正版が公表されており、家族の視点から睡眠・食欲・気分・体調の変化を評価する項目で構成されています。

家族用チェックリストが特に有効なのは、本人が「大丈夫」と思い込んでいる場合や、忙しさのあまり自身の変化に気づけていない場合です。疲労が蓄積した本人は客観的な自己評価が難しくなることがあり、家族の気づきが早期発見・早期対応につながることがあります。

厚生労働省のメンタルヘルス指針でも「労働者の家族に対して、ストレスやメンタルヘルスケアの基礎知識、事業場のメンタルヘルス相談窓口などの情報を提供しましょう」と示されており(同指針第6項(3)エ)、家族や身近な人たちを過重労働対策のパートナーとして位置づける考え方と一致しています。

長時間労働者の面接指導における活用

本チェックリストの主な活用場面のひとつが、長時間労働者に対する医師面接指導です。

面接指導の法的根拠とチェックリストの役割

労働安全衛生法第66条の8の規定により、1か月の時間外・休日労働時間が80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を行う義務があります。

面接指導では医師が労働者の疲労の蓄積状況・健康状態・就業継続の可否等について評価します。その際、本チェックリストの回答結果を事前に記入・提出することで、面接指導を効率的かつ客観的に進めるためのベースとなります。面接では疲労蓄積度のスコア・勤務状況の状態・高スコア項目の背景要因を確認したうえで、就業上の措置(労働時間の短縮・業務内容の変更等)の必要性を産業医が判断します(中央労働災害防止協会「2023年改正版活用ガイド」)。

立場別の活用方法

中央労働災害防止協会が公表した「活用ガイド」では、立場ごとの活用方法が示されています。

事業者・人事労務担当者としての活用として、長時間労働等の過重労働による健康障害防止対策に取り組む旨の事業者の方針を表明し全従業員に周知すること、繁忙期に個人・チームに業務が集中しないよう人員と業務量の調整を前もって行うこと、ノー残業デー等の過重労働防止対策を活用してセルフチェックを促すことが推奨されています。管理監督者としての活用として、部下の疲労の蓄積や変化に早期に気づくための観察の視点として活用し、スコアの高い部下に対して産業医・産業保健スタッフへの相談を積極的に促すことが推奨されています。産業医・産業保健スタッフとしての活用として、面接指導の事前ツールとして回答結果を収集・活用し、高スコア項目を起点に職場環境改善の必要性を事業者に助言するための根拠として活用できます。

PCやスマートフォンから使えるWebツールの紹介

疲労蓄積度チェックリストをPDFで印刷して記入するのが本来の方法ですが、より手軽にセルフチェックを行えるよう、Webブラウザから利用できる無料のオンラインツールも公開されています。

当法人(一般社団法人メンタルセーフティー推進機構・MSA)では、PC・スマホから疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年版)」を無料で提供しています。各数値を入力するだけで疲労蓄積度のセルフチェックが行え、結果を画面上で確認したり印刷したりすることができます。スマートフォンにも対応しており、紙とペンなしでいつでも手軽に実施できます。注意点をご確認のうえご利用ください。

職場での活用場面として、長時間労働者が面接指導の前に自己チェックを済ませてから産業医の面接に臨む、管理職が部下に送るリンクとして活用する、産業保健スタッフが保健指導の際に参加者に実施を促すなど、PDFよりも低いハードルで活用できる点が特徴です。


【免責事項・ご利用上の注意】
  • 本無料ツール(以下、本ツール)は、利便性向上のため無償提供するものです。利用、利用不能、仕様変更、中止等により生じた損害やトラブルについて当法人は一切の責任を負いません。なお、入力された情報は保存されません。
  • 本ツールの利用をもって、本免責事項に同意したものとみなします。

📋 疲労蓄積度自己診断チェックリスト

厚生労働省ガイドラインに基づく公式チェックシステム(2023年改正版)
自覚症状 1 / 27

人事労務担当者・産業保健スタッフが押さえておくべき実務のポイント

疲労蓄積度チェックリストを職場の過重労働対策に有効に活かすための実務ポイントを整理します。

活用シーン / 目的 具体的な対応内容・実施方法 根拠・推奨される仕組み
2023年改正版への
切り替え(必須)
現在もなお**2004年版**のチェックリストを使用している場合は、**速やかに2023年改正版へ切り替えること**が必要です。
※改正版には旧版にない評価項目が追加されています。
【厚生労働省の通知】
基安労発0404第1号
(令和5年4月4日)において改正版の活用が求められています。
面接指導との連動 **時間外・休日労働時間が80時間超**の労働者には、面接指導の事前準備として本チェックリストの記入を依頼します。 回答結果を**産業医に提供する(本人の同意を得て)仕組み**を整えることが推奨されます。
セルフチェックの
環境整備
**80時間未満であっても疲労を感じている労働者**が自発的にセルフチェックできるよう、前述のWebツールのURLを周知します。
【周知媒体の例】イントラネット・掲示板・メールマガジン等
自発的なチェックを促すための環境づくりとして有効です。
衛生委員会での活用
(PDCAサイクル)
集計した疲労蓄積度スコアの分布を衛生委員会に報告し、**高スコア者が多い部署・時期の特定**と**職場環境改善**につなげます。 【報告の条件】
個人が特定されない形で報告・活用することが推奨されます。

※本表はご提示いただいた案内文の構成要素(通達番号・時間基準・報告要件など)を網羅した運用管理用の一覧表です。

疲労蓄積度チェックリストに関するよくある質問

Q 疲労蓄積度チェックリストは誰でも使えますか?
A

はい、すべての働く人が使えます。本チェックリストは長時間労働者の面接指導での活用が主な目的ですが、過重労働対策の一環として、時間外労働時間にかかわらず日常的なセルフチェックツールとして活用することも推奨されています。ただし、糖尿病・高血圧症等の疾患がある方は症状の影響で判定が正しく行われない可能性がある点に留意してください。

Q 2004年版と2023年改正版の違いは何ですか?
A

主な違いは3点です。勤務状況の評価項目として「職場・顧客等の人間関係による負担」「終業時刻から次の始業時刻間の休息時間(勤務間インターバル)」が追加されたこと、自覚症状の項目として「食欲がないと感ずる」が追加されたことです。これらにより、メンタルヘルス関連の項目・休息時間の確保状況・現代的なストレス要因を加味した評価が可能になりました。まだ旧版を使用している場合は早急に改正版への切り替えをお勧めします。

Q チェックリストの結果を会社に提出する義務はありますか?
A

チェックリストの結果は労働者の個人情報であり、本人の同意なしに会社(事業者)が取得することはできません。面接指導の実施にあたっては、労働者から事前にチェックリストへの回答・産業医への提供についての同意を得ることが必要です。なお、面接指導の申出をしたことを理由として事業者が労働者に不利益な取扱いを行うことは法律で禁止されています(労働安全衛生法第66条の8第3項)。

Q スコアが高かった場合、労働者はどうすればよいですか?
A

スコアが2点以上の場合は、まず勤務状況の中でスコアを押し上げている具体的な要因(残業時間・人間関係・インターバルの短さ等)を確認し、自分で改善できるものは改善を試みることが第一歩です。自分の努力だけでは解決しにくい場合(長時間労働・業務量の過多等)は、上司や産業保健スタッフに相談することが推奨されています。スコアが4点以上の場合は産業医・産業保健師への相談、6〜7点の場合は速やかな医師への相談が推奨されます(中央労働災害防止協会「2023年改正版活用ガイド」)。

Q 家族用チェックリストはどのように使えばよいですか?
A

家族用チェックリストは、労働者の日常的な様子(睡眠・食欲・気分・体調の変化等)について家族が評価するものです。本人が「大丈夫」と言っていても家族から見て変化が気になる場合には、家族用チェックリストを記入してもらい、本人や産業保健スタッフへ共有することが有効です。事業者・人事労務担当者としては、家族用チェックリストの存在と入手方法を従業員家族に周知することも過重労働対策の一環として推奨されます。

Q テレワーク中の社員にも疲労蓄積度チェックリストは有効ですか?
A

有効です。テレワーク勤務では通勤負担がなくなる反面、仕事と生活の境界が曖昧になりやすく、「気づかないうちに長時間労働になっている」「休息が十分に取れていない」というケースが生じやすい環境です。前述のWebツールを活用すれば、自宅からでも手軽にセルフチェックができます。テレワーク勤務者に対しては、勤怠管理システムによる労働時間の正確な把握とあわせて、疲労蓄積度チェックリストの定期的な実施を促す仕組みを設けることが推奨されます。

Q チェックリストの結果はどのように保管すればよいですか?
A

面接指導を経て就業上の措置を講じた場合の記録は5年間の保存が義務づけられています(労働安全衛生規則第52条の7)。チェックリストの記入結果そのものの保存期間には法定の定めはありませんが、面接指導の根拠資料として同様の期間保管することが推奨されます。紙媒体の場合は鍵のかかる場所での管理、電子データの場合はアクセス権限の限定・パスワード管理による厳重な取り扱いが必要です。

疲労のサインを「見逃さない」職場づくりのために

疲労蓄積度チェックリスト(2023年改正版)は、過重労働による健康障害を未然に防ぐための実用的なツールです。2023年の改正によって、人間関係によるストレス・勤務間インターバル・食欲という現代の労働環境に即した評価項目が加わり、より精度の高い疲労状態の把握が可能になりました。

このチェックリストを「面接指導が必要になったときだけ使うもの」として捉えるのではなく、従業員が日常的に自分の状態を振り返るセルフケアのツールとして、そして管理職・産業保健スタッフが過重労働を抱える人を早期に発見するためのツールとして、組織全体で活用することが重要です。

疲労蓄積度チェックリストに関する主要情報へのクイック参照表(リンク集)