健康診断「要精密検査」の放置リスクとは?人事が実践すべき受診勧奨3ステップ

公開日: 最終更新日: 執筆:一般社団法人メンタルセーフティー推進機構
:「要精密検査」を放置する社員に会社はどう対応すべき?放置リスクと人事が実践すべき受診勧告の進め方

毎年の健康診断が終わると、「要精密検査」「要再検査」と判定された社員への対応が人事労務担当者の重要な業務となります。しかし実態として、こうした判定を受けた社員の一部が受診を先延ばしにし、放置してしまうケースは珍しくありません。「受診するかどうかは個人の自由では?」と思われがちですが、放置を見過ごした会社側に重大な法的リスクが生じる場合があります。当解説記事では、二次健康診断に関する会社の法的義務の正確な範囲・放置した場合のリスク・人事が実践すべき受診勧奨の3ステップ・文例・産業医の関与・個人情報の取り扱いまでを、厚生労働省の指針をもとに体系的に解説します。


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「要精密検査」と「要再検査」の意味と違い

健康診断の結果に記載される「要再検査」と「要精密検査」は、いずれも「異常所見あり」に分類されますが、その意味は異なります。人事労務担当者として正確に区別しておくことが適切な事後対応の前提となります。

要再検査とは

要再検査とは、健康診断の検査結果が基準値を外れているものの、日時や体調・測定誤差等によって一時的な異常の可能性があるため、同じ検査を改めて行い結果を確認する必要があると判定されたものです。血圧・血糖値・尿検査などの検査項目で基準値をわずかに超えた場合に判定されることが多く、再測定によって正常範囲に戻ることも少なくありません。

要精密検査とは

要精密検査とは、健康診断の結果から何らかの疾患が疑われるため、より詳細な検査(画像検査・内視鏡・血液検査など)を受けて確定診断・詳しい評価を行う必要があると判定されたものです。要再検査よりも医学的な必要性が高く、放置すると疾患の進行につながるリスクがあります。

いずれの判定も、健康診断の結果通知書では「要精密検査」「要再検査(要二次健診)」などと記載されます。両者をまとめて「二次健康診断」の対象として、事後措置の対象として位置づけることが実務上一般的です。

有所見者の割合──放置はめずらしくないが

厚生労働省の「定期健康診断結果報告(令和4年)」によると、定期健康診断を受診した労働者のうち、何らかの所見があった者(有所見者)の割合は58.3%にのぼります。つまり健康診断受診者の約6割が何らかの異常所見を持つという状況です。

一方で、二次健康診断(再検査・精密検査)の受診率は必ずしも高くなく、「忙しいから」「特に自覚症状がないから」という理由で放置するケースが実態として多くあります。この「放置の常態化」が、後に重大な健康障害・会社の法的責任へと発展するリスクの温床となっています。

健康診断で要精密検査となった社員への対応について、会社の法的義務・放置リスク・受診勧奨のステップ・産業医の関与・文例など実務上の重要ポイントをまとめた要約図
「要精密検査」を放置する社員に会社はどう対応すべき?

二次健康診断(再検査・精密検査)に関する会社の法的義務の範囲

「要精密検査」の放置への対応を考えるうえで、まず会社が法律上どこまでの義務を負うのかを正確に整理することが重要です。

一次健康診断の実施と事後措置は義務

労働安全衛生法第66条第1項に基づく定期健康診断(一次健康診断)の実施は、事業者の法的義務です。さらに、健康診断の実施後に「異常の所見があると診断された労働者」に対しては、以下の事後措置が事業者に義務づけられています。

結果の通知(労働安全衛生法第66条の6)として、遅滞なく本人に健康診断結果を通知する義務があります。産業医等による意見聴取(同法第66条の4)として、健診結果に異常の所見があった労働者について、医師または歯科医師から就業上の措置に関する意見を聴取する義務があります。就業上の措置の実施(同法第66条の5)として、意見聴取の結果を踏まえ、必要に応じて労働時間の短縮・配置転換等の措置を講じる義務があります。

二次健康診断の受診は「会社の義務」ではなく「勧奨が適当」

ここで重要なポイントがあります。二次健康診断(再検査・精密検査)の受診を強制することは、会社の法律上の義務には含まれません。産業科学大学・産業医実務研修センターのマニュアル等でも「義務ではない」と明確に整理されています。

ただし、義務ではないからといって何もしなくてよいわけではありません。厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」では、二次健康診断の対象者に対して「受診を勧奨することが適当である」と明記されており、勧奨行為そのものが事業者として求められる対応として位置づけられています。

厚生労働省指針が示す「二次健診勧奨」の位置づけ

厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成8年10月1日・健康診断結果措置指針公示第1号、最終改正:平成29年4月14日)は以下のとおり示しています。

「(一次健康診断の)医師の診断の結果に基づき、二次健康診断の対象となる労働者を把握し、当該労働者に対して、二次健康診断の受診を勧奨するとともに、診断区分に関する医師の判定を受けた当該二次健康診断の結果を事業者に提出するよう働きかけることが適当である。」

 

(厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」、平成29年改正版)

この「適当である」という表現は、義務という強制力を持つものではありませんが、指針として事業者に求められる対応の水準を示したものです。受診勧奨を行わなかった場合の事後的なリスク(安全配慮義務違反)を考えると、実務上は義務に準じた対応として取り組むことが重要です。

二次健診勧奨を放置した場合に会社が負う3つのリスク

受診勧奨を行わず、また産業医への情報提供・就業上の措置を怠った場合、会社には以下の3つの重大なリスクが生じます。

二次健診を勧奨しないリスク 具体的なリスク内容と実務・経営に及ぼす影響の詳細
リスク①:
安全配慮義務違反による損害賠償責任
最も深刻なリスクは民事上の損害賠償責任です。労働契約法第5条は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めており、健康診断後の適切な事後措置を怠ることは安全配慮義務違反として評価される可能性があります。
典型的なリスク事例として、定期健康診断で高血圧・高血糖等の異常所見があったにもかかわらず、会社が受診勧奨・産業医への情報提供・就業上の措置を怠り、その後その労働者が脳梗塞・心筋梗塞などを発症した場合が挙げられます。「異常を把握していたにもかかわらず必要な措置を取らなかった」という事実は、損害賠償訴訟において会社側に著しく不利な事情として評価されます。
リスク②:
行政指導・是正勧告
労働基準監督署の調査において、有所見者への事後措置(産業医への意見聴取・就業上の措置)が適切に行われていないことが判明した場合、行政指導・是正勧告の対象となる可能性があります。産業医への意見聴取義務(労働安全衛生法第66条の4)は法定義務であり、これを怠ることは労働安全衛生法第120条の罰則(50万円以下の罰金)の対象となりえます。
リスク③:
労災認定と企業の社会的信頼の低下
有所見者が受診を放置した結果として業務上の疾病・脳・心臓疾患等が発症し、労働災害として認定された場合、会社の安全管理体制の問題として社会的に報道・公表される可能性があります。とりわけ過重労働が絡む事案では、「会社が健康診断の異常所見を把握していながら長時間労働を続けさせた」という事実関係が過労死等として認定されるリスクがあります。

事後措置の全体像:5つのステップ

厚生労働省の指針・労働安全衛生法に基づく定期健康診断後の事後措置は、以下の5つのステップで構成されています。人事労務担当者はこの全体像を把握したうえで、各ステップに適切に関与することが求められます。

ステップ 内容 根拠・性格
①結果の把握・確認 健診機関から結果を受領し有所見者を把握する 法定義務(記録・保存)
②本人への結果通知 遅滞なく本人に健診結果を通知する 法定義務(第66条の6)
③受診勧奨 要精密検査・要再検査の対象者に二次健診受診を勧める 指針上「適当」(義務ではない)
④産業医等への意見聴取 有所見者について産業医等から就業上の意見を聴く 法定義務(第66条の4・3か月以内)
⑤就業上の措置の決定・実施 医師の意見を踏まえ必要な就業上の措置を講じる 法定義務(第66条の5)

③の受診勧奨は法的義務ではありませんが、④の産業医意見聴取を適切に行うためには、可能な限り二次健診の結果を産業医に提供できる状態にすることが望ましく、受診勧奨はそのための重要なプロセスといえます。

人事が実践すべき二次健診受診勧奨の3ステップ

受診勧奨を確実かつ適切に実施するための実務ステップを整理します。記録を残しながら丁寧に進めることが、後のリスク管理においても重要です。

ステップ1:有所見者の把握と産業医への情報提供

健診機関から結果を受領したら、要精密検査・要再検査に該当する有所見者のリストを速やかに作成します。この情報は産業医に速やかに提供し、産業医が就業上の意見を述べるための判断材料として活用します。

なお、健康診断結果は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当するため、取り扱える担当者の範囲(人事労務担当者・産業保健スタッフ等)を就業規則・取扱規程で定め、その範囲内で情報を管理することが不可欠です。上司や役員に対して本人の同意なしに個別の健診結果を開示することは認められません。

ステップ2:個別の受診勧奨(口頭・書面)

有所見者一人ひとりに対して、受診勧奨を個別に行います。最初は口頭またはメールで、一定期間後も受診が確認できない場合は書面で行うことが効果的です。

受診勧奨を行う際の基本的なポイントとして、「受診を命令するものではなく、健康のために受診をお勧めしている」という勧奨の性格を明確にすること、受診期限の目安を示すこと、費用や受診先についての情報提供を行うこと、個人情報は厳守されることを伝えることが挙げられます。受診勧奨の実施日時・方法・内容・対象者の反応は必ず記録に残してください。この記録が後の安全配慮義務の履行を証明する重要な証拠となります。

ステップ3:受診結果の確認と産業医への報告

受診勧奨を行った後、受診が完了した社員については、可能であれば二次健康診断の結果を産業医に提供するよう働きかけます(厚生労働省指針の求め)。社員が結果を事業者に提出することに同意しない場合は、その旨を記録します。

受診を勧奨したにもかかわらず、正当な理由なく受診を拒否し続ける社員については、就業上の措置の必要性を産業医と相談しながら対応を継続します。受診の有無にかかわらず、産業医は入手できる情報の範囲で就業上の意見を述べることができます。

二次健診診断受診勧奨の文例

実務で使いやすい受診勧奨文のテンプレートをご紹介します。社内の文体・フォーマットに合わせて調整してください。

通知・書面の名称 文面の具体例(テンプレート)

文例①:

要精密検査(または要再検査)の
一次通知(メール)

件名:【ご連絡】健康診断結果について(受診のお勧め)
〇〇さん
お疲れ様です。人事部の〇〇です。
このたびの定期健康診断の結果について、〇〇の検査項目で「要精密検査(または要再検査)」の判定がありましたのでご連絡します。
精密検査(再検査)の受診は義務ではありませんが、ご自身の健康のためにも早めに医療機関を受診されることをお勧めします。お忙しいとは存じますが、〇月〇日までを目安に受診いただきますようお願いします。
受診先や費用についてご不明な点があれば、人事部(内線〇〇〇〇)または産業保健スタッフへお気軽にご相談ください。なお、健康診断の結果および今後のやり取りは、担当者以外には開示しません。
〔人事部〇〇〕

文例②:

要精密検査(または要再検査)の
書面による受診勧奨状

受診勧奨状
〇〇年〇月〇日
〔所属〕〔氏名〕 様
〔会社名〕人事部
健康診断結果に基づく精密検査(再検査)の受診について
先日の〇〇年度定期健康診断の結果、下記の検査項目について医療機関での精密検査(再検査)を受けることが推奨されています。
記:〔対象の検査項目〕
精密検査・再検査の受診は法律上の強制ではありませんが、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(厚生労働省)において、事業者は対象となる労働者に受診を勧奨することが適当であるとされています。ご自身の健康を守るため、〇月〇日(〇)を目安にご受診いただくことを強くお勧めします。
受診後は、可能な範囲で結果を〔担当者名・連絡先〕までご報告いただけますと幸いです。受診費用については〔補助の有無と金額〕の補助があります。
ご不明な点は人事部(内線〇〇〇〇)またはメール(〇〇@〇〇)までご連絡ください。
以上

産業医の意見聴取(就業判定)と就業上の措置

受診勧奨の実施と並行して、法定義務である産業医等への意見聴取と就業上の措置の実施を確実に進めることが重要です。

産業医の意見聴取は3か月以内に行う義務

労働安全衛生法第66条の4は、健康診断の結果に「異常の所見があると診断された労働者」について、事業者が医師または歯科医師の意見を聴取しなければならないと定めています。労働安全衛生規則第51条の2では、この意見聴取は「健康診断が行われた日から3か月以内」に行う必要があると規定されています。

50人以上の事業場では選任されている産業医が、50人未満の事業場では地域産業保健センター(さんぽセンター)の医師がこの役割を担います。意見聴取にあたっては、産業医に対して労働者の業務内容・労働時間・職場環境等の情報を提供することが必要です。

就業区分の3つの判定と措置の内容

産業医の意見聴取を受けて行われる「就業判定」の結果は、以下の3つの区分に分類されます。

就業区分の種類 判定内容および講ずべき措置の詳細
通常勤務 健康状態に問題なく現在の就業環境・内容で勤務を継続できるという判定です。
就業制限 勤務に制限を加える必要がある状態であり、残業の禁止・労働時間の短縮・深夜業の制限・出張の禁止・配置転換などの措置が講じられます。
要休業 勤務を一時的に休む必要がある状態であり、療養のための休暇・休職の措置が取られます。

事業者はこの就業判定を参考にしつつ、労働者本人の意見も聴いたうえで具体的な就業上の措置を決定します。判定は産業医の「意見」であり、最終的な措置の決定は事業者(会社)が行うものですが、医師の意見を正当な理由なく無視することは安全配慮義務違反につながるリスクがあります。

二次健康診断の結果が得られない場合の産業医意見聴取

受診勧奨を行ったにもかかわらず社員が二次健康診断を受診せず、結果が得られない場合でも、産業医への意見聴取を3か月以内に行う義務は変わりません。この場合、産業医は一次健康診断の結果と入手できる情報の範囲で意見を述べることになります。受診勧奨を行った事実・受診しなかった事実・産業医への情報提供と意見聴取の実施をすべて記録に残しておくことが、事後的なリスク管理において重要です。

個人情報・健康情報の適切な取り扱い

健康診断の結果は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」であり、特に慎重な取り扱いが求められます。受診勧奨・事後措置の実施においても、以下の点を守ることが不可欠です。

  • 取り扱い担当者の限定として、健康診断結果を閲覧できる担当者の範囲を就業規則・取扱規程で定め、その範囲外への開示を禁止します。
  • 上長・役員・同僚への開示禁止として、本人の同意なしに個人の健診結果を上司や役員に伝えることは認められません。ただし、就業上の措置のために必要な最小限の情報(「業務負荷を減らす必要がある」等の就業判定に基づく措置の内容)については、業務上必要な範囲で関係者に伝えることができます。
  • 目的外利用の禁止として、健康診断結果を人事評価・採用・降格・解雇の判断に利用することは禁止されています。

二次健康診断の受診勧奨に関するよくある質問

Q 要精密検査の受診を強制することはできますか?
A

一般健康診断の二次健康診断(精密検査・再検査)については、法律上の強制受診義務はなく、強制することはできません。ただし、就業規則に「会社が必要と認めた場合の精密検査への協力義務」を明記している場合は、その規定に基づいて受診を求めることができます。就業規則に記載がない場合は、あくまでも「勧奨」の範囲にとどめることが法的に適切な対応です。

Q 受診勧奨にかかる費用は会社が負担すべきですか?
A

二次健康診断(精密検査・再検査)の費用負担については、一般健康診断の項目に関するものについては事業者が負担することが妥当とされています。特殊健康診断に関する二次検査費用については、業務との直接的な関連性から事業者が負担すべきとされています。費用補助の有無・金額については就業規則に明記しておくことで、社員が受診しやすい環境が整います。なお、雇用保険が適用される二次健康診断等給付(脳血管・心臓疾患関連の4項目すべてに異常所見がある場合)については、労災保険から年1回の二次健康診断等給付を受けることができます。

Q 要精密検査を放置している社員を就業制限することはできますか?
A

二次健康診断の結果がない状態でも、一次健康診断の結果と産業医の意見に基づいて就業制限(残業禁止・業務内容の変更等)を講じることは可能です。ただし、産業医の意見なしに会社が独自の判断で就業制限を行うことは、労働者の権利を侵害するリスクがあります。必ず産業医に相談・意見聴取を行ったうえで、医師の意見を踏まえた措置として実施することが重要です。

Q 受診勧奨の記録はどのくらい保管すればよいですか?
A

健康診断個人票(一次健診の結果)の保存期間は5年間(労働安全衛生規則第51条)と法定されています。受診勧奨に関する記録(勧奨の日時・方法・社員の反応等)も同様に5年以上の保管を推奨します。安全配慮義務違反に関する損害賠償請求権の消滅時効は原則5年(権利行使できることを知った時から)または10年(権利行使できる時から)のため、これを念頭に置いた保管が必要です。

Q 産業医がいない50人未満の事業場ではどうすればよいですか?
A

産業医の選任義務がない50人未満の事業場では、地域産業保健センター(さんぽせンター)に相談・依頼することで、医師による有所見者への意見聴取・面談を無料で受けることができます。受診勧奨の方法・事後措置の進め方についても、さんぽセンターの産業保健スタッフからアドバイスを受けることができます。まず最寄りのさんぽセンターに連絡することをお勧めします。

Q 社員が「要精密検査の結果を会社に出したくない」と言った場合はどうすればよいですか?
A

二次健康診断の結果を事業者に提出するかどうかは、最終的には本人の判断に委ねられます。ただし厚生労働省の指針では「事業者に提出するよう働きかけることが適当」とされており、提出の意義・会社が情報を適切に保護すること・結果が人事上の不利益に使われることはないことを丁寧に説明し、提出への協力を求めることが適切な対応です。提出を拒否された場合は、入手できる情報の範囲で産業医が意見を述べることになります。

Q 受診勧奨を行う際に、上司に社員の健診結果を知らせてよいですか?
A

原則として認められません。健康診断結果は要配慮個人情報であり、本人の同意なしに上司へ開示することは個人情報保護法・労働安全衛生法第105条(秘密の保持)に反する可能性があります。受診勧奨は人事部・産業保健スタッフ等の健康情報取扱担当者が直接本人に行うものであり、上司を経由する方法は個人情報保護の観点から避けるべきです。

二次健康診断受診勧奨の記録と管理の実務ポイント

受診勧奨の実務を確実に進め、リスクに備えるために、以下の記録・管理の仕組みを整えることが重要です。

有所見者の管理リストとして、下記の内容を一元管理するリストを作成します。

  • 要精密検査・要再検査に該当する社員の氏名
  • 対象項目
  • 勧奨実施日
  • 受診状況
  • 産業医への情報提供日・意見聴取日
  • 就業措置

これらのリストはアクセス権限を限定して厳重に管理します。期限管理の仕組みとして、産業医への意見聴取期限(健診実施から3か月以内)を管理するカレンダーまたはシステムへの登録を行い、期限超過を防ぐ仕組みをつくります。衛生委員会への報告として、有所見者数・受診勧奨の実施状況・二次受診率・就業措置の実施状況を定期的(年1回以上)に衛生委員会に報告し、組織的な取り組みとして推進します。

「要精密検査」の放置ゼロを目指す職場づくりのために

健康診断の「要精密検査」「要再検査」を放置することは、社員本人の健康リスクを高めるだけでなく、会社の安全配慮義務違反・損害賠償リスク・行政指導という重大な問題につながります。当解説記事でご紹介したとおり、二次健康診断の受診は会社が強制できるものではありませんが、厚生労働省指針に基づく受診勧奨・産業医への意見聴取・就業上の措置という一連の対応を記録を残しながら丁寧に進めることが、会社として求められる姿勢です。

受診勧奨を「形式的に通知を送る」だけのものとせず、産業保健師や産業医が個別に声をかけ、受診しやすい費用補助・日程調整・受診先情報の提供を組み合わせることで、二次受診率を高めることができます。受診した社員が「受けてよかった」と感じ、来年度も積極的に一次健診を受けるという好循環をつくることが、職場全体の健康水準の向上につながります。

健康診断事後措置に関する主要情報へのクイック参照表(リンク集)