職場のメンタルヘルス対策に取り組みたいけれど、何から学べばよいかわからない——そのような悩みをお持ちの人事労務担当者・管理職・産業保健スタッフの方に、ぜひ知っていただきたいのがメンタルヘルス・マネジメント検定試験です。当解説記事では、大阪商工会議所が主催するこの検定の目的・3つのコースの内容・受験料・2026年度の試験日程・合格率の推移・公式テキスト改訂情報まで、公式情報をもとにわかりやすく整理します。職場での活用方法についてもご紹介しますので、受験・導入を検討するうえでの参考にしていただければ幸いです。
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メンタルヘルス・マネジメント検定とは
メンタルヘルス・マネジメント検定試験は、働く人たちの心の不調の未然防止と活力ある職場づくりを目指して、職場内での役割に応じて必要なメンタルヘルスケアに関する知識や対処方法を習得するための検定試験です。大阪商工会議所が主催し、日本商工会議所が後援しています。
仕事や職業生活に強い不安や悩み・ストレスを抱える人が増加傾向にあるなか、心の不調による休職や離職もまた増えています。働く人たちが持てる能力を発揮し、職場で活躍するためには、心の健康管理(メンタルヘルスマネジメント)への取り組みが一層重要になっています。また、雇用する企業としても、社会的責任の履行・人的資源の活性化・労働生産性の維持向上を図るうえで、社員のメンタルヘルスケアについて組織的かつ計画的に取り組む必要があります。
検定の目的と学習内容の3つの特徴
メンタルヘルス・マネジメント検定試験の学習・出題内容には、他のメンタルヘルス関連資格・検定と異なる以下の3つの特徴があります。
- 第一次予防(疾病の未然防止と健康増進)に重点を置いている点です。問題が生じてから対処するのではなく、不調を未然に防ぐための知識と行動を重視しています。
- ラインによるケアと組織全体によるケアを促進する内容である点です。個人のセルフケアに限らず、管理職・人事労務スタッフ・経営幹部それぞれの役割に応じた知識を体系的に学べることが特徴です。
- 産業保健だけでなく人事労務管理の観点も重視した内容である点です。法律・労務管理・組織運営の実務に即した内容が出題されるため、現場の担当者にとって実践的な学びが得られます。
各コースの出題内容は、厚生労働省が策定した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を参考に構築されています。
メンタルヘルスマネジメント検定の主催・後援機関
主催は大阪商工会議所、後援は日本商工会議所です。商工会議所が主催する公的性格の強い検定試験であり、企業内の研修・人材育成プログラムへの採用、昇格・昇進の要件として活用している企業も多くあります。
メンタルヘルスマネジメント検定における3つのコースの内容と対象者
メンタルヘルス・マネジメント検定試験は、職位・職種別(対象別)に3つのコースを設定しています。いずれのコースからも受験可能であり、複数コースを同時に受験することもできます(Ⅰ種とⅡ種、ⅡとⅢ種の組み合わせが可能)。
メンタルヘルスマネジメント検定Ⅰ種(マスターコース)
Ⅰ種は人事労務管理スタッフ・経営幹部を対象としたコースです。到達目標は「自社の人事戦略・方針を踏まえたうえで、メンタルヘルスケア計画・産業保健スタッフや他の専門機関との連携・従業員への教育研修等に関する企画・立案・実施ができる」こととされています。
出題内容は以下の9項目です。企業経営におけるメンタルヘルス対策の意義と重要性、メンタルヘルスケアの活動領域と人事労務部門の役割、ストレスおよびメンタルヘルスに関する基礎知識、人事労務管理スタッフに求められる能力、メンタルヘルスケアに関する方針と計画、産業保健スタッフ等の活用による心の健康管理の推進、相談体制の確立、教育研修、職場環境等の改善です。
試験は選択問題(2時間)と論述問題(1時間)の2部構成で、配点は選択問題100点・論述問題50点の合計150点満点です。合格基準は合計105点以上かつ論述問題25点以上となっており、3コースの中で最も難易度が高い試験です。
メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種(ラインケアコース)
Ⅱ種は管理監督者(管理職)を対象としたコースです。到達目標は「部下が不調に陥らないよう普段から配慮するとともに、部下に不調が見受けられた場合には安全配慮義務に則った対応を行うことができる」こととされています。
出題内容は以下の7項目です。メンタルヘルスケアの意義と管理監督者の役割、ストレスおよびメンタルヘルスに関する基礎知識、職場環境等の評価および改善の方法、個々の労働者への配慮、労働者からの相談への対応(話の聴き方・情報提供および助言の方法等)、社内外資源との連携、心の健康問題をもつ復職者への支援の方法です。
試験は選択問題のみ(2時間)で100点満点、合格基準は70点以上です。受験者数が最も多いコースであり、管理職への受検推奨・義務化を導入している企業が多くあります。
メンタルヘルスマネジメント検定Ⅲ種(セルフケアコース)
Ⅲ種は一般社員を対象としたコースです。到達目標は「自らのストレスの状況・状態を把握することにより、不調に早期に気づき、自らケアを行い、必要であれば助けを求めることができる」こととされています。
出題内容は以下の6項目です。メンタルヘルスケアの意義、ストレスおよびメンタルヘルスに関する基礎知識、セルフケアの重要性、ストレスへの気づき方、ストレスへの対処・軽減の方法、社内外資源の活用です。
試験は選択問題のみ(2時間)で100点満点、合格基準は70点以上です。メンタルヘルスの基礎を学ぶ入門的な位置づけのコースであり、新入社員研修や若手社員向けの導入として活用されるケースも多くあります。
| メンタルヘルスマネジメント検定の各コース | 対象 | 試験形式 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ種(マスターコース) |
人事労務管理スタッフ 経営幹部 |
選択問題 + 論述問題(計3時間) |
合計105点以上 かつ論述25点以上 |
| Ⅱ種(ラインケアコース) | 管理監督者(管理職) | 選択問題(2時間) | 70点以上 |
| Ⅲ種(セルフケアコース) | 一般社員 | 選択問題(2時間) | 70点以上 |
メンタルヘルスマネジメント検定の受験方法・受験資格・受験料
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 受験方法 |
受験方法には公開試験と団体特別試験の2種類があります。
|
| 受験資格 |
受験資格に学歴・年齢・性別・国籍の制限はありません。希望のコースをどこからでも受験できます。 なお、Ⅰ種とⅡ種、ⅡとⅢ種の同時受験も可能ですが、Ⅰ種とⅢ種の同時受験はできません。 |
| 受験料 | 2026年度時点の受験料(消費税10%込み)は、Ⅰ種(マスターコース)が11,550円、Ⅱ種(ラインケアコース)が7,480円、Ⅲ種(セルフケアコース)が5,280円です。 |
2026年度のメンタルヘルスマネジメント検定試験日程
2026年度の公開試験は以下の日程で実施されます。
| 回 | 施行日 | 実施コース | 一般申込期間 |
|---|---|---|---|
| 第41回 | 2026年11月1日(日) | Ⅰ種・Ⅱ種・Ⅲ種 | 2026年9月4日(金)~9月17日(木) |
| 第42回 | 2027年3月21日(日) | Ⅱ種・Ⅲ種 | 2027年1月22日(金)~2月4日(木) |
※上記は変更されることがあります。最新情報は大阪商工会議所のホームページ等にてご確認ください。
第41回の団体受付期間は2026年8月17日(月)〜8月28日(金)です。第42回の団体受付期間は2027年1月5日(火)〜1月15日(金)です。なお受験地・コースごとに定員が設定されており、申込期間中でも定員に達した場合は受付が終了します。早めの申込が推奨されます。
メンタルヘルスマネジメント検定各コースの合格率の推移
大阪商工会議所が公表している直近の公開試験結果をもとに、各コースの合格率の推移を整理します。
| コース | 実施頻度・難易度の特徴 | 各回次別の合格率実績(推移) |
|---|---|---|
| Ⅰ種(マスターコース) | Ⅰ種(マスターコース)については年1回(11月実施回のみ)の実施です。例年20%前後で推移しており、3コースの中で最も難易度の高い試験です。 |
・第35回(2023年11月)20.5% ・第37回(2024年11月)20.9% ・第39回(2025年11月)19.4% |
| Ⅱ種(ラインケアコース) | Ⅱ種(ラインケアコース)については、回によって合格率に幅があります。 |
・第35回(2023年11月)56.5% ・第36回(2024年3月)73.2% ・第37回(2024年11月)60.5% ・第38回(2025年3月)54.8% ・第39回(2025年11月)47.8% ・第40回(2026年3月)78.0% |
| Ⅲ種(セルフケアコース) | Ⅲ種(セルフケアコース)については、おおむね65〜78%前後で推移しています。 |
・第35回(2023年11月)71.9% ・第36回(2024年3月)72.1% ・第37回(2024年11月)74.3% ・第38回(2025年3月)77.8% ・第39回(2025年11月)65.1% ・第40回(2026年3月)69.7% |
出典:メンタルヘルス・マネジメント検定試験公式サイト(大阪商工会議所)
メンタルヘルスマネジメント検定公式テキスト第6版への改訂と出題への影響
2026年3月23日、大阪商工会議所は公式テキストの改訂(第6版の発行)と2026年度以降の出題に関する重要なお知らせを公表しています。
第6版の発行時期は2026年6〜7月(予定)です。2026年9月末日までに実施される団体特別試験については、引き続き公式テキスト第5版(2021年7月発行)の内容を基準として出題されます。一方、2026年11月1日実施の第41回公開試験以降は、公式テキスト第6版の内容とそれを理解したうえでの応用力を問う問題が出題される予定です。受験を検討している方は、受験時期と使用するテキストの版の対応関係を必ず確認したうえで学習を進めることが重要です。最新の情報は大阪商工会議所の公式サイトおよびテキストページで随時確認してください。
また、出題内容については2026年4月1日時点で成立している法令に準拠するとされています。法令改正等に関する情報は公式サイトで随時公開されますので、受験前に確認することをお勧めします。
職場のメンタルヘルス対策における活用方法
メンタルヘルス・マネジメント検定は、個人の知識習得にとどまらず、企業・組織全体のメンタルヘルス対策の底上げに活用できる検定試験です。職場での役割ごとに、具体的な活用場面をご紹介します。
| 活用対象・導入形態 | 活用方法・導入効果の詳細 |
|---|---|
|
人事労務担当者・ 産業保健スタッフへの活用 |
Ⅰ種(マスターコース)の取得を目指すことで、社内のメンタルヘルスケア計画の策定・産業保健スタッフ等との連携方法・教育研修の企画立案・相談体制の構築といった実務全般にわたる体系的な知識を習得できます。特に人事労務担当者にとっては、ストレスチェック制度の運用・高ストレス者対応・職場復帰支援といった実務と直結した知識を整理するうえで有益です。Ⅰ種合格者を対象とした「Ⅰ種合格者フォーラム」も年1回開催されており、合格後も継続的な学習の機会が提供されています。 |
| 管理職(ラインケア)への活用 |
厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、管理監督者によるラインケアが4つのケアの重要な柱のひとつとして位置づけられています。Ⅱ種(ラインケアコース)の学習を通じて、管理職は部下の変化への気づき方・相談の受け方・安全配慮義務に則った対応・社内外資源との連携・復職支援の方法を体系的に習得できます。 管理職へのⅡ種受験を昇格要件のひとつとして導入している企業や、年次ごとに受検を推奨する取り組みを行っている企業も多くあります。大阪商工会議所の公表データでは、受験申込者数上位法人として名だたる大企業が名を連ねており、組織的な導入実績の高さがうかがえます。 |
| 一般社員のセルフケアへの活用 | Ⅲ種(セルフケアコース)は、一般社員が自らのストレスに早期に気づき、適切にセルフケアを行う能力を身につけることを目的としています。新入社員研修・若手社員向けの研修・メンタルヘルスに関する社内啓発キャンペーンの一環として受検を組み込む企業が増えています。「勉強したことで自分のストレス状態を客観的に見られるようになった」という受検者の声も多く寄せられており、知識の習得が日々のセルフケア実践につながる検定です。 |
| 団体特別試験による組織的な導入 | 団体特別試験を活用することで、社内で都合のよい日時・場所に合わせて試験を実施することができます。社内研修のカリキュラムと連動させる、全社員を対象に一斉受験を行う、部門ごとに受験を推奨するといった形での組織的な導入が可能です。10名以上から申し込めるため、中小規模 of 事業場でも活用しやすいのが特徴です。 |
メンタルヘルス・マネジメント検定に関するよくある質問
メンタルヘルスマネジメント検定の取得が職場と個人の健康を支えるために
メンタルヘルス・マネジメント検定は、単なる知識の証明にとどまらず、職場のメンタルヘルス対策を組織全体で底上げするための実践的な学びの場です。Ⅲ種で一般社員のセルフケア意識を高め、Ⅱ種で管理職のラインケア能力を育て、Ⅰ種で人事労務担当者が組織全体の対策を推進する——この3層の取り組みが連動することで、厚生労働省が推奨する4つのケアの実践に近づくことができます。
2026年度からは公式テキストが第6版に改訂される重要な転換点でもあります。受験を検討している方は、第41回(2026年11月)以降の試験に向けて新テキストへの切り替えを念頭に置きながら準備を進めましょう。
人事労務担当者や産業保健スタッフとして職場のメンタルヘルス対策を推進する立場にある方には、まず自身がⅡ種またはⅠ種の取得を目指しながら、社内への導入も検討してみていただければと思います。

