「第○条の規定」と「社内規程」の違いは?人事労務のための正しい使い分け

公開日: 最終更新日: 執筆:一般社団法人メンタルセーフティー推進機構
「規程」と「規定」の違い、意味・使い分け・間違えやすい表現を人事労務担当者向けに解説

就業規則や社内文書を作成する際に「規程」と「規定」のどちらを使えばよいか迷った経験はないでしょうか。「育児介護休業規程」と書くべきか「育児介護休業規定」と書くべきか、「第○条の規程により」と「第○条の規定により」はどちらが正しいのか——日常的に扱う文書の中で、この二語は頻繁に登場します。

当解説記事では、「規程」と「規定」それぞれの意味・使い分けの場面・間違えやすい表現・規則・規約・細則との違い・就業規則との関係まで、法制執務の考え方をもとにわかりやすく解説します。


「規程」と「規定」──なぜ混同されやすいのか

「規程(きてい)」と「規定(きてい)」はどちらも「きてい」と読む同音異義語であり、いずれも「きまり」「ルール」を表す言葉です。日常会話では「きてい」といえば意味が通じてしまうため、書面にするとき初めてどちらの漢字を使うべきか迷う状況が生じます。

同音異義語であることが混乱の根本

同音異義語の混同は日本語に多いですが、「規程」と「規定」が特に混乱しやすい理由は、どちらも「きまりごと」という広い意味合いを持ちつつ、法律・行政・企業文書という同じ文脈で使われるからです。さらに、一般的な辞書では「規定」の意味として「規程」を含む広義の解説がなされている場合があり、両者の区別が曖昧に扱われてきた背景もあります。

人事労務の現場でこそ正確に区別すべき理由

ただし、社内規程の整備・就業規則の作成・法令の引用といった場面では、この二語の使い分けを誤ると文書としての正確性・信頼性を損なうことになります。特に「第○条の規程」「規程する」という誤用は、行政機関・法制執務の世界では明確な誤りとされており、労働基準監督署への届出書類・規程集の制定・社内文書における法令引用で誤用があれば、担当者の文書作成能力への疑問につながりかねません。正確な使い分けを習慣にしておくことが、実務における信頼性の土台となります。

「規定」の意味と用法

まず「規定」の定義と用法を正確に押さえておきましょう。

規定の定義

「規定」には大きく2つの意味があります。

  1. 第一の意味は「物事を一定の形に定めること」または「定められた事柄・内容」という一般的な意味です。「規定の書式に記入する」「規定通りに対応する」といった用法です。
  2. 第二の意味は、法令・条例・規則等における「個々の条文そのもの」または「条文として定めること」です。法制執務の観点からは、この第二の意味における用法が特に重要です。自治体の法令FAQでも「規定とは条文自体を指す表現であり、『第○条の規定』という表現を用いる」と明示されています。

規定の具体的な用例

「規定」が正しく使われている表現として以下のものが挙げられます。

「第○条の規定に基づき」「本条の規定により」「労働安全衛生法第66条の規定による健康診断」「就業規則に規定する事項」「本規程に規定のない事項については別途協議する」などです。いずれも「条文・個別のルール」を指す用法か、「定めること(動詞的用法)」として使われています。法令の条文を引用するときは必ず「規定」を使います。「第○条の規定」は正しく、「第○条の規程」は誤りです。

「規程」の意味と用法

次に「規程」の定義と用法を整理します。

規程の定義

「規程」とは、特定の事項に関するルールを体系的にまとめた一連の条項の全体を指す言葉です。複数の条文・条項が集まって構成された「文書そのもの・まとまり全体」の名称として使われます。

法制執務の観点では、法令や条例・規則等の発令形式以外のもの(告示・訓令等)の題名として用いられる名称とされています。企業や官公庁が定める個別のルール文書のタイトルとして使われる言葉であり、「文書・まとまりの単位」を示すのが「規程」です。

規程の具体的な用例

「規程」が正しく使われている表現として以下が代表的な文書名として挙げられます。

なお、「育児介護休業規程第○条の規定により」という文章では、「規程」が文書全体の名称として、「規定」がその中の条文の指示として、それぞれ正しく使われています。

  • 育児介護休業規程
  • 賃金規程
  • 退職金規程
  • 情報セキュリティ管理規程
  • 個人情報取扱規程
  • 服務規程
  • 出張旅費規程
  • ハラスメント防止規程など

「規程」と「規定」の関係:全体と部分

「規程」と「規定」の関係は、「全体(文書)」と「部分(条文)」という入れ子構造として理解するとわかりやすくなります。

用語 指しているもの 具体例
規程 特定事項に関する条文全体をまとめた文書 育児介護休業規程・賃金規程
規定 規程(または規則)の中の個々の条文・内容 第5条の規定・本規程に規定する事項

「育児介護休業規程」という文書(規程)の中に、子の看護休暇について定めた「第○条(規定)」がある、という関係です。「育児介護休業規程の第○条に規定されている子の看護休暇は……」という文章が正しい使い方の典型例です。このように規程と規定は対立する概念ではなく、「文書全体(規程)の中に個別の条文(規定)が含まれる」という入れ子の構造にあります。

間違えやすい表現と正しい使い方

実務の文書作成でよく見られる誤用を具体的に確認しておきましょう。

「第○条の規程」という使い方は誤り

最も多い誤用のひとつが「第○条の規程により」という表現です。これは「規定」が正しく、「第○条の規定により」とすべきです。条文を指す場合は必ず「規定」を使います。

  • 誤:「育児介護休業法第16条の規程により」
  • 正:「育児介護休業法第16条の規定により」

法令・条例・規則・規程のいずれの文書の中の条文を指す場合も、「第○条の規定」が正しい表現です。行政機関への届出書類・法令を引用する社内文書でこの誤用があると、文書の信頼性に影響します。

「規程する」は誤り

「規程」は名詞であり、動詞として「規程する」という形で使うことはできません。個別の事柄を定める動詞的な用法では「規定する」を使います。また、「定める」という表現も同様に使えます。

  • 誤:「本条において規程する内容は……」
  • 正:「本条において規定する内容は……」
  • 正:「本規程に定める事項は……」

「本規程は」と「本規則は」の混用

就業規則の条文中に「本規程は」と書くことは誤りです。就業規則は「規則」として法律上定められた文書であるため、その条文中では「本規則は」と表現すべきです。一方、賃金規程・退職金規程等の条文中では「本規程は」が正しい表現です。

文書のタイトル(就業規則・賃金規程等)と、その条文中に登場する自己参照の表現(本規則・本規程等)は一致させることが基本です。「就業規則」の条文中に「本規程」と書いてしまう誤用は実務でも多く見られるため、注意が必要です。

「規則」「規約」「細則」との違い

社内文書を整備するうえで、「規程」「規定」に加えて「規則」「規約」「細則」の使い分けも理解しておくと、文書体系の設計が整理しやすくなります。

用語(文書の分類) 指している対象・法令上の位置づけおよび実務運用の詳細
規則(きそく) 規則とは、組織が構成員に守ることを求める基本的なルールをまとめた文書の名称です。労働基準法第89条が「就業規則」と名称を定めているように、法令上義務づけられた文書名として用いられる場合があります。また「○○管理規則」のように、組織全体の根本的なルールを定めるものに使われることが多い名称です。
企業内では、就業規則を「規則」として位置づけ、その下位文書として各種「規程」を整備するという階層構造が一般的です。
規約(きやく) 規約とは、組合・協会・任意団体など、複数の当事者が相互に合意して定めたルールの名称です。「組合規約」「○○協会規約」のように、構成員の合意・承認を経て成立するルール文書に用いられます。企業と従業員という一方向的な関係ではなく、対等な当事者間の取り決めに使われることが多い言葉です。
細則(さいそく) 細則とは、上位の規程や規則で定めた内容をより詳細に・具体的に定めた補足的な文書です。「服務規程細則」「情報セキュリティ管理細則」のように、規程だけでは実務運用に必要な細かな手続き・判断基準が不足する場合に、その補完を目的として制定されます。

社内文書の階層構造としては「就業規則→各種規程→細則(要領)」という順に詳細化されていくイメージです。

就業規則と各種規程の関係

人事労務担当者にとって最も身近な「就業規則」と「各種規程」の関係を正確に理解しておくことは、実務上の判断の基盤となります。

就業規則は「規則」:労働基準法上の位置づけ

就業規則は労働基準法第89条により名称が定められており、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」と規定されています。就業規則は法律で義務づけられた文書であり、その名称(「規則」)も法律上のものです。したがって企業が独自に「就業規程」という名称を使うことも慣行的には行われますが、法令上の名称は「就業規則」です。

各種規程は就業規則の一部

賃金規程・退職金規程・育児介護休業規程・服務規程・情報セキュリティ管理規程などの各種規程は、就業規則の一部を詳細化・補完するために設けられる文書です。法律上は、賃金や退職等の絶対的必要記載事項を「賃金規程」「退職金規程」として別文書にしている場合でも、それらは就業規則の一部として扱われます。

したがって、賃金規程や退職金規程を変更する場合も、就業規則の変更と同様に、過半数代表者への意見聴取・従業員への周知・労働基準監督署への届出(10人以上の事業場の場合)が必要です。

「賃金規程」か「賃金規定」か

実務ではしばしば「賃金規定」という表記も見られますが、「賃金の計算方法・支給方法をまとめた文書全体の名称」という意味では「賃金規程」が正確です。「賃金規定」という表記が完全に誤りとはいえませんが、文書の名称として使う場合は「規程」を用いることが法制執務上の一般的な考え方に沿っています。自社の文書体系の中で統一した表記を採用することが、実務管理上の混乱を防ぐうえで重要です。

社内規程体系の整備における実務のポイント

社内規程体系を整備・見直しする際に、「規程」と「規定」の使い分けに加えて意識しておくべき実務上のポイントを整理します。

チェック・管理項目 具体的な確認内容および実務上の修正点・管理手順の詳細
文書名称の統一 文書名称の統一として、社内のすべての規程文書の名称(○○規程・○○規則等)を一覧化し、命名ルールを統一することが、規程体系の管理を容易にします。「情報セキュリティ規程」と「個人情報取扱い規定」が混在しているような場合は、どちらかに統一することをお勧めします。
自己参照表現の確認 自己参照表現の確認として、各規程文書の第1条等で使われる「本規程は」「本規則は」の表現が、文書名称と一致しているかを確認します。就業規則の条文中に「本規程は」と記載されている場合は「本規則は」に修正が必要です。
法令引用表現の確認 法令引用表現の確認として、社内規程の条文中で法令を引用する際に「第○条の規程により」という誤用がないかをチェックします。法令の条文を指す場合は必ず「第○条の規定により」と修正します。
改定履歴・周知の管理 改定履歴・周知の管理として、各種規程の制定日・改定日・改定内容の記録を残し、改定の都度従業員への周知・就業規則の一部である規程については届出の手続きを漏れなく行うことが法的リスクの回避につながります。

「規程」と「規定」に関するよくある質問

Q 「育児介護休業規定」と「育児介護休業規程」はどちらが正しいですか?
A

文書全体の名称として使う場合は「育児介護休業規程」が正確です。「規程」は特定事項に関するルールをまとめた文書の名称として用いる言葉です。「規定」は文書の名称ではなく、条文・個別のルール内容を指す言葉です。ただし、民間企業の社内文書では「育児介護休業規定」という表記も慣行的に広く使われており、直ちに「誤り」とはいえない場合があります。新規に文書を作成・改訂する際は「規程」を用いることをお勧めします。

Q 法令の条文を引用する際に「第○条の規程により」と書いてしまっていました。修正すべきですか?
A

修正することをお勧めします。法制執務の観点では「第○条の規定により」が正しく、「第○条の規程により」は誤用とされています。行政機関への届出書類・就業規則の条文・社内文書での法令引用において、「規定」と「規程」を正確に使い分けることが文書の信頼性を高めます。

Q 「規程する」という動詞の使い方は正しいですか?
A

誤りです。「規程」は名詞であり、「規程する」という動詞形はありません。「○○を規定する」(個別のルールを定める場合)または「規程を制定する」「規程を設ける」(文書を作成する場合)という表現を用いてください。

Q 就業規則の条文中に「本規程は」と書くのは間違いですか?
A

誤りです。「就業規則」という名称の文書の条文中では「本規則は」と書くべきです。「本規程は」という表現は「賃金規程」「退職金規程」など「○○規程」という名称の文書の中で使う表現です。文書名称と自己参照の表現は一致させることが原則です。

Q 規則と規程はどちらが上位の文書ですか?
A

社内文書の体系として多くの企業で採用されているのは「就業規則(規則)」を上位に置き、その詳細を定める文書として「各種規程」を位置づける階層構造です。ただし「規則」と「規程」自体に法律上の優劣関係はなく、どちらを上位に置くかは各企業の規程体系の設計次第です。公的機関(行政)では規則より規程が下位という位置づけが一般的ですが、民間企業への直接適用は難しいため、自社の規程管理規程等で明確に定めることが推奨されます。

Q 「規約」と「規程」はどう違いますか?
A

最大の違いは「誰が定めるか」という点です。規約は労働組合・協会・任意団体など複数の当事者が相互の合意によって定めるルールであり、対等な立場の当事者間の取り決めに使われます。規程は企業・組織が定める内部ルールの文書名称です。「組合規約」「○○協会規約」のように、構成員全員の合意・承認が前提となるルール文書が規約です。

Q 「細則」は「規程」とどう違いますか?
A

規程は特定事項についてのルール全体をまとめた文書であり、細則はその規程の内容をさらに詳細化・具体化する補足的な文書です。「情報セキュリティ管理規程」の運用手続きを詳しく定めた「情報セキュリティ管理細則」のように、規程だけでは判断しにくい実務的な手続き・基準を細則として補足するというのが一般的な関係です。細則は規程の下位文書として位置づけられ、規程に反する内容を細則に定めることはできません。

正確な用語の使い分けが信頼できる社内文書をつくる

「規程」と「規定」の違いは、一度整理してしまえばシンプルです。文書全体・まとまりを指すときは「規程」、条文・個別の内容を指すとき・動詞的に使うときは「規定」、という使い分けが基本です。

当解説記事でご紹介した誤用(「第○条の規程」「規程する」「本規程は」の混用)を避けるだけで、社内文書や法令引用の表現の正確性は大きく向上します。特に法令を引用する届出書類・就業規則・各種規程の条文については、これらの誤用がないかを定期的に点検することをお勧めします。

規程体系の整備・見直しを行う際は、文書名称の統一・自己参照表現の確認・法令引用表現の点検を合わせて行い、社会保険労務士・弁護士の確認を経て制定・改訂することが、法的リスクを最小化したうえで信頼性の高い社内文書体系を構築する近道となります。

「規程」と「規定」に関する主要情報へのクイック参照表(リンク集)