ウェルビーイングとは|企業・組織・社員の視点で経営への活用を考える

公開日: 最終更新日: 執筆:一般社団法人メンタルセーフティー推進機構
ウェルビーイングとは|企業・組織・社員の視点で経営への活用を考える

「ウェルビーイング(Well-being)」という言葉は近年、政府の政策文書・企業の経営計画・産業保健の現場まで幅広く登場するようになりました。しかしその定義や、「健康経営」「人的資本経営」との関係、企業・組織・社員それぞれにとっての意味と実践方法について、体系的に理解できていないという人事労務担当者や産業保健スタッフの方も少なくないのではないでしょうか。当解説記事では、ウェルビーイングの概念的な理解を深めたうえで、厚生労働省・内閣府の公的資料と最新の学術論文を参照しながら、職場・経営への実践的な活用の視点をお伝えします。


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ウェルビーイングとは

ウェルビーイング(Well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念です。「幸福」と訳されることもありますが、単なる一時的な幸せの感情にとどまらない、より包括的・継続的な「よい状態」を指す言葉として、政策・経営・医療・心理学など多くの分野で活用されています。

「ウェルビーイングとは?」をテーマに、企業・組織・社員の視点で経営への活用を考えた記事の要約図
ウェルビーイングとは

WHOの定義とその広がり

ウェルビーイングの起点となる定義は、世界保健機関(WHO)の憲章前文にあります。WHOは健康を「単に病気でないあるいは虚弱でないということではなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態(Well-being)」と定義しており、ウェルビーイングはこの「完全に良好な状態」を指す中核概念です。

この定義の特徴は3点あります。第一に、健康を「疾病の不在」ではなく「ポジティブな状態」として捉えていること。第二に、身体的健康のみならず精神的・社会的次元を明示的に含んでいること。第三に、単なる感情的幸福だけでなく、社会的なつながりや機能的な状態まで包含していることです。

ウェルビーイングと幸福(Happiness)との違い

ウェルビーイングと「幸福(Happiness)」は近い概念ですが、心理学的には異なる意味合いを持ちます。幸福(Happiness)が喜び・楽しさといった一時的な感情的満足を中心とした概念であるのに対し、ウェルビーイングはより多次元的・継続的な「生きていることの充実した状態」を意味します。

厚生労働省・内閣府が示すウェルビーイングの位置づけ

日本の公的機関もウェルビーイングを重要な政策概念として位置づけています。厚生労働省の「雇用政策研究会報告書概要」では、ウェル・ビーイングを「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」と定義し、就業面からのウェル・ビーイングの向上を雇用政策の中心課題に据えています(雇用政策研究会報告書、2019年)。

内閣府は「Well-being(幸福度)に関する取組」として、「満足度・生活の質に関する調査」を実施し、国民生活を様々な角度から統計データで把握する「Well-beingダッシュボード」を構築しています(内閣府)。この取り組みは、GDPに代表される経済指標だけでは測れない「豊かさ」を多面的に可視化しようとするものであり、ウェルビーイングが国家レベルの政策目標として明確に位置づけられていることを示しています。

ウェルビーイングを構成する主な理論・モデル

ウェルビーイングの概念を実践的に理解するうえで、心理学・行動科学分野から提唱された代表的な2つのモデルを押さえておくことが有用です。いずれも職場・組織への応用が進んでいるモデルです。

PERMAモデル(セリグマン)

PERMAモデルは、アメリカの心理学者でポジティブ心理学の創始者であるマーティン・セリグマン(Martin Seligman)が提唱したウェルビーイング理論に基づくモデルです。ウェルビーイングは以下の5つの独立した要素(それぞれの頭文字を取って「PERMA」)によって構成されるとしています。

PERMAの構成要素 定義および経験すべき状態の詳細
Positive Emotion(ポジティブ感情) Positive Emotion(ポジティブ感情)は喜び・感謝・希望・愛情など肯定的な感情を経験することです。
Engagement(エンゲージメント) Engagement(エンゲージメント)は仕事や活動に深く没頭し「フロー状態」を経験することです。
Relationships(良好な人間関係) Relationships(良好な人間関係)は他者との信頼・感謝・支え合いのある関係性を持つことです。
Meaning(意味・意義) Meaning(意味・意義)は自分を超えた何かのために行動し、生や仕事に意味・目的を見出すことです。
Accomplishment(達成) Accomplishment(達成)は目標の達成・習熟・成功体験を積み重ねることです。

PERMAモデルの特徴は、従来の幸福研究が「気分がいい状態(主観的幸福感)」を中心としていたのに対し、一時的な感情にとどまらない持続的な充実(Flourishing)の追求を目標とした点にあります。セリグマンは「ポジティブ心理学が目指すのは自分の人生と地球上の持続的幸福の量を増やすことである」と述べており(Seligman, M.E.P., 2011, Flourish, Free Press)、この視点は組織・職場のウェルビーイング向上にも直接応用できます。

ギャラップ社の5つの要素

米国の世論調査会社ギャラップ(Gallup)社は世界150か国以上での調査に基づき、ウェルビーイングを構成する5つの要素を提唱しています。ギャラップ社のモデルはPERMAとは異なり、日常の生活実態により密着した実証的な要素で構成されています。

ウェルビーイングの構成要素 定義および充実させるべき状態の詳細
Career Wellbeing(キャリア) Career Wellbeing(キャリア)は仕事や日々の活動への充実感・満足感です。
Social Wellbeing(社会的関係) Social Wellbeing(社会的関係)は強い人間関係や愛の存在です。
Financial Wellbeing(経済停安定) Financial Wellbeing(経済的な安心感・将来への見通しです。
Physical Wellbeing(身体的健康) Physical Wellbeing(身体的健康)は良い健康状態とエネルギーの維持です。
Community Wellbeing(コミュニティ) Community Wellbeing(コミュニティ)は自分が所属するコミュニティへの貢献・帰属感です。

2つのモデルの比較と活用の考え方

PERMAモデルとギャラップ社の5要素は相互に補完的な関係にあります。

比較項目 PERMAモデル ギャラップ社の5要素
提唱者 マーチン・セリグマン(心理学者) ギャラップ社(調査企業)
重点 心理的充実・内面的幸福感 生活全般の実務的・社会的側面
アプローチ 理論的・規範的 実証的・統計的
職場活用 エンゲージメント・意味・関係性の向上 キャリア満足・コミュニティ形成・経済的安心

職場のウェルビーイング向上に取り組む際は、PERMAモデルを「心理的側面の充実」の枠組みとして、ギャラップ社のモデルを「日常の生活の質・実務的なウェルビーイング」の枠組みとして使い分けることが実践上有効です。

就業面からのウェルビーイング:厚生労働省の視点

公的な政策文書のなかでウェルビーイングと労働・雇用の関係を最も体系的に論じているのが、厚生労働省の雇用政策研究会報告書です。

雇用政策研究会報告書が示す方向性

厚生労働省の雇用政策研究会報告書概要は、「人口減少・社会構造の変化の中で、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環、多様な活躍に向けて」という副題のもと、2040年の日本が目指すべき姿として「一人ひとりの豊かで健康的な職業人生の実現、人口減少下での我が国の経済の維持・発展」を掲げています。

同報告書では、就業面からのウェルビーイングを「労働者一人ひとりが、自ら望む生き方に沿った豊かで健康的な職業人生を安心して送れる社会を築いていくこと」と位置づけており、以下の3つの柱を相互補完的な関係として示しています。就業面からのウェルビーイングの向上・生産性向上の好循環、多様な人々が活躍できる社会の推進、そして技術革新等の変化への適応です。

ウェルビーイングの向上と生産性向上の好循環

同報告書が特に強調しているのが「就業面からのウェルビーイングの向上と生産性向上の好循環」という考え方です。報告書は「就業面からのウェルビーイングの向上が、労働者一人ひとりの能力発揮を通じ、企業の生産性向上に寄与し、企業の生産性向上が、就業面からのウェルビーイングの向上のための原資をもたらす」という双方向の関係を示しています。

この視点は重要です。従来の産業保健・健康経営の議論は「従業員の健康→生産性向上」という一方向の因果関係で語られることが多かったのに対し、この報告書は「ウェルビーイングの向上と生産性向上は好循環する」という相互依存の関係として捉えています。具体的な政策対応として、多様な働き方の実現・労働者の主体的なキャリア形成支援・外部労働市場の機能強化・企業における人材育成・生産性向上の推進が示されています。

人的資本経営とウェルビーイング

近年、企業経営においてウェルビーイングへの関心が高まっている最大の背景のひとつが「人的資本経営」の潮流です。

人的資本経営とは

人的資本経営とは、従業員が持つスキル・知識・経験・創造性などを「資本(Capital)」として捉え、それへの投資が企業価値の向上をもたらすという経営の考え方です。従来の「人的資源管理(HRM:Human Resource Management)」が人を管理・効率化の対象として捉えていたのに対し、人的資本経営は人を「投資によって価値が増大する資本」として位置づけます。

2023年3月から有価証券報告書への人的資本情報の記載が義務化され(金融商品取引法改正)、上場企業は従業員の健康・安全・エンゲージメント・ダイバーシティ等に関する情報開示が求められるようになりました。ウェルビーイングはこの開示項目の重要な要素のひとつとして位置づけられており、企業の「人的資本開示」の実践においても欠かせない概念となっています。

戦略的人的資源管理論とウェルビーイングの関係

産業医学レビュー誌(Vol.38, No.3)に掲載された森永雄太「人的資本経営:戦略的人的資源管理論とウェルビーイング視点からの考察」は、人的資本経営の理論的背景として「戦略的人的資源管理論(Strategic Human Resource Management: SHRM)」を取り上げ、ウェルビーイングとの関係を論じています(森永雄太、2025年、産業医学レビュー Vol.38 No.3 pp.144-)。

同論文は、日本での人的資本経営の実践にあたって「人材の価値を高める投資」と「従業員のウェルビーイング向上」を切り離さずに統合的に推進することの重要性を指摘しています。SHRMの文脈では従来、人材戦略はもっぱら企業業績(パフォーマンス)との関係で評価されてきましたが、近年はウェルビーイングを「人材戦略が生み出すべき成果のひとつ」として位置づける視点が台頭しており、この論文はその潮流を産業保健・産業医学の観点から論じた重要な文献です(森永雄太、2025年)。

ウェルビーイングと健康経営の違いと補完関係

ウェルビーイング経営と健康経営は混同されやすい概念ですが、明確な違いがあります。健康経営は、従業員の身体的・精神的健康を経営的視点から戦略的に実践するもので、生活習慣病予防・メンタルヘルス対策・職場環境整備を中心としています。一方、ウェルビーイング経営はWHO定義の「身体的・精神的・社会的に良好な状態」を起点として、社会的つながり・キャリアの充実・意味の発見・コミュニティへの帰属感まで含む、より広義の「人間的な充実」を目指す経営姿勢です。

両者は対立概念ではなく補完的な関係にあります。健康経営が「疾病防止・健康増進」という土台を築き、ウェルビーイング経営がその土台の上に「働く喜び・生きがい・社会的充実」を積み上げるというイメージで捉えるとわかりやすいといえます。経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」(2022年)も「健康経営への投資とWell-beingの視点」を人材戦略の重要な推進施策として明記しています。

企業・組織・社員それぞれの視点からの活用

ウェルビーイングを実践に移すためには、経営・組織・個人という3つの異なる立場からの具体的なアプローチが必要です。

経営・企業視点:ウェルビーイングを経営戦略に組み込む

企業がウェルビーイングを経営戦略に組み込むための出発点は「何のためにウェルビーイングを高めるのか」という目的の明確化です。従業員エンゲージメントの向上・離職率の低下・イノベーション創出・採用ブランドの強化・人的資本開示への対応など、経営上の目的と連動した形でウェルビーイング向上の取り組みを設計することが重要です。

厚生労働省の雇用政策研究会報告書が示すように「ウェルビーイングの向上と生産性向上の好循環」を生み出すためには、経営者自身が「従業員のウェルビーイングは投資対象である」という認識を持ち、トップダウンのコミットメントとボトムアップの取り組みを組み合わせることが求められます。具体的には、健康経営宣言・人的資本情報の開示・衛生委員会でのウェルビーイング指標の定期確認などが実践的なアプローチとして挙げられます。

組織・管理職視点:チームのウェルビーイングを高める

管理職がチームのウェルビーイングを高めるうえで最も直接的な影響を持つのが「ラインケア」の実践です。PERMAモデルを応用すれば、管理職がチームメンバーに働きかけられる行動として以下が考えられます。

ポジティブ感情の醸成として、日常の業務でのねぎらい・感謝の言葉・成功の共有があります。エンゲージメントの促進として、得意なことを活かせる業務のアサインや成長機会の提供があります。良好な関係性の構築として、定期的な1on1・チーム内の相互理解・心理的安全性の確保があります。意味・意義の伝達として、仕事が組織・社会に与える意義を折に触れて共有することがあります。達成感の創出として、小さな成功を認め称え・中間目標を設定して達成の積み重ねを支援することがあります。

特に「心理的安全性(Psychological Safety)」は、チームのウェルビーイングを高め、創造性・学習・パフォーマンスを向上させる組織的条件として、多くの研究で支持されている概念です(Edmondson, A.C., 1999)。管理職が心理的安全性を高める具体的な行動として、ミスを責めずに学習の機会として扱うこと・反対意見を尊重すること・質問を奨励することなどが有効とされています。

社員・個人視点:セルフケアとウェルビーイングの実践

個人レベルでのウェルビーイング向上は、PERMAモデルの5要素を意識的に日常に取り込むことから始められます。ポジティブ感情の維持として感謝日記・マインドフルネスの実践、エンゲージメントの向上として自分の強みを活かせる業務や趣味・学習への積極的な取り組み、良好な関係性のメンテナンスとして同僚・友人・家族との質の高いコミュニケーション、仕事・生活の意義の再確認として自分の価値観と行動の一致度を振り返ること、そして達成体験の積み重ねとして小さな目標設定と達成のサイクルを回すことが挙げられます。

また、厚生労働省が推進するストレスチェック制度(労働安全衛生法第66条の10)は、個人のセルフケアを促進するための重要な仕組みとして、就業面からのウェルビーイング向上に直接貢献するものと位置づけることができます。自分のストレス状態を客観的に把握し、必要に応じて専門家に相談するという行動は、ウェルビーイングの自己管理の実践そのものです。

ウェルビーイングの測定・指標化

ウェルビーイングは「主観的幸福感(Subjective Well-being: SWB)」と「客観的指標(Objective indicators)」の2つのアプローチで測定されます。職場での活用においては、その両方を組み合わせることが推奨されています。

指標の分類 具体的な指標と実務・経営における位置づけの詳細
主観的指標 主観的指標としては、従業員エンゲージメントサーベイ・ストレスチェックの集団分析結果・満足度調査・eNPS(Employee Net Promoter Score)などが実務でよく使われます。内閣府は「満足度・生活の質に関する調査」のなかで、「生活全般」「仕事と生活のバランス」「家族関係」「社会とのつながり」など多次元の主観的満足度を測定しており、このフレームワークは職場のウェルビーイング測定の設計においても参考になります(内閣府)。
客観的指標 客観的指標としては、健康診断の有所見率・メンタルヘルス不調による休職者数・有給休暇取得率・残業時間・離職率・育児休業取得率などが活用されます。2023年から義務化された人的資本開示では、これらの指標を有価証券報告書等で開示することが求められており、ウェルビーイングの「可視化」が企業経営の重要課題として本格的に位置づけられています。

人事労務担当者・産業保健スタッフが取り組むべき実務のポイント

ウェルビーイングを「概念の理解」から「職場の実践」へと転換するために、人事労務担当者・産業保健スタッフが具体的に取り組めるポイントを整理します。

  1. 自社のウェルビーイングの現状を可視化すること
    ストレスチェックの集団分析・従業員サーベイ・離職率・健康診断の有所見率など、すでに手元にあるデータをウェルビーイングの視点から改めて読み直すことが出発点です。厚生労働省の雇用政策研究会報告書が示すように「就業面からのウェルビーイングの向上が生産性向上につながる」という視点でデータを解釈し、課題を経営層に提言することが産業保健スタッフの重要な役割です。
  2. 健康経営の取り組みをウェルビーイングの枠組みで再整理すること
    すでに行っている健康診断・ストレスチェック・メンタルヘルス研修などを「ウェルビーイング向上の取り組み」として位置づけ直すことで、人的資本開示での活用・経営層への説得力のある提言・従業員への意義の伝達が容易になります。
  3. 管理職のラインケア能力の向上
    チームのウェルビーイングを左右する最大の要因は直属の上司の行動であるとする研究は多く、管理職向けの研修においてPERMAモデル・心理的安全性・ウェルビーイングの概念を取り入れることで、ラインケアの実効性が高まります。

ウェルビーイングに関するよくある質問

Q ウェルビーイングとハピネス(Happiness)は同じ意味ですか?
A

異なります。ハピネスが喜びや楽しさといった一時的・感情的な幸せを中心とした概念であるのに対し、ウェルビーイングはより多次元的・継続的な「よい状態」を指します。ウェルビーイングには個人の能力発揮・社会関係・人生の意味といった複合的要素が含まれており、一時的な気分の良さとは区別される継続性と多次元性が特徴です。

Q 健康経営とウェルビーイング経営の違いは何ですか?
A

健康経営は従業員の身体的・精神的健康を経営的視点で戦略的に実践するものであり、生活習慣病予防・メンタルヘルス対策が中心です。ウェルビーイング経営はそれをさらに拡張し、社会的なつながり・キャリアの充実・仕事の意義・コミュニティへの帰属感まで含む「人間的な充実」全体を対象とします。両者は補完的であり、健康経営の土台の上にウェルビーイング経営が積み上がるイメージです。

Q 人的資本経営においてウェルビーイングはどのように位置づけられますか?
A

人的資本経営では、従業員のウェルビーイングは「企業が投資すべき人的資本の状態」として位置づけられます。森永(2025年)が論じるように、戦略的人的資源管理論の文脈では従来パフォーマンス向上の手段として捉えられてきた人材管理が、ウェルビーイングを成果のひとつとして統合的に追求する方向に進化しつつあります。経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」も健康経営への投資とWell-beingの視点を人材戦略の重要施策として明記しています。

Q ウェルビーイングは職場でどのように測定できますか?
A

主観的指標(従業員サーベイ・エンゲージメント調査・ストレスチェック集団分析等)と客観的指標(離職率・休職者数・有給休暇取得率・健康診断有所見率等)を組み合わせることが推奨されます。内閣府の「満足度・生活の質に関する調査」が採用しているWell-beingダッシュボードのフレームワークも、職場版のサーベイ設計の参考になります(内閣府)。単一の指標だけでは多次元的なウェルビーイングの全体像を捉えられないため、複数の指標を定期的に把握するサイクルが重要です。

Q 小規模事業場でもウェルビーイング向上に取り組めますか?
A

取り組めます。ウェルビーイング向上に費用や大規模な組織体制は必ずしも必要ではありません。管理職の日常的な声かけ・感謝の文化・1on1の実施・業務の意義を伝えるコミュニケーションなど、PERMAモデルの各要素を意識した日常的な行動変容から始められます。厚生労働省の「こころの耳」や産業保健総合支援センター(さんぽセンター)が提供する無料のeラーニング・相談サービスも積極的に活用できます。

Q ウェルビーイングの向上は本当に生産性向上につながりますか?
A

多くの研究でその関連性が支持されています。厚生労働省の雇用政策研究会報告書は「就業面からのウェルビーイングの向上が、労働者一人ひとりの能力発揮を通じ、企業の生産性向上に寄与する」という関係を政策の基本認識として明示しています。ただし「ウェルビーイングを高めれば必ず生産性が上がる」という単純な因果関係ではなく、職場環境・業務設計・人間関係など多くの要因が複合的に影響する点に留意が必要です。

Q ウェルビーイングと心理的安全性の関係は何ですか?
A

心理的安全性(チームのなかで対人的なリスクを取っても安全だという信念)は、チームのウェルビーイングを高める最も重要な組織的条件のひとつです。PERMAモデルの「良好な関係性(Relationships)」の職場における核心に心理的安全性が位置すると考えることができます。管理職が心理的安全性を高める行動を取ることは、チームメンバーのエンゲージメント・創造性・意欲の向上を通じ、組織全体のウェルビーイングと生産性向上につながります。

ウェルビーイングを「概念」から「実践」へ

ウェルビーイングは、決して抽象的・理念的なキーワードではありません。WHOが「健康の定義」の中核に置き、厚生労働省が雇用政策の目標に据え、内閣府が国家レベルの指標として可視化しようとしているこの概念は、働く人一人ひとりの日常と、それを取り巻く組織・経営のあり方に深く根ざしたものです。

当解説記事でご紹介したとおり、ウェルビーイングは「身体的・精神的・社会的に良好な状態」という多次元の概念であり、PERMAモデル・ギャラップ社の5要素という実践的な枠組みを通じて職場での具体的な取り組みに落とし込むことができます。厚生労働省の雇用政策研究会報告書が示す「ウェルビーイングの向上と生産性向上の好循環」という考え方は、人事労務担当者・産業保健スタッフが経営層にウェルビーイング投資の意義を説明するための強力な論拠となります。

人的資本経営の文脈でウェルビーイングへの関心がかつてなく高まっている今、産業保健スタッフと人事労務担当者が連携して「従業員のウェルビーイングを可視化し、経営に接続する」という取り組みを進めることが、企業と働く人の双方にとって持続可能な価値創造につながります。

ウェルビーイングに関する主要情報へのクイック参照表(リンク集)