ストレスチェック結果の取り扱い|結果の通知と保存、個人情報保護の運用ポイント

公開日: 最終更新日: 執筆:一般社団法人メンタルセーフティー推進機構

常時50人以上の労働者がいる事業場では実施が義務となっているストレスチェック制度ですが、その運用において最も慎重な対応が求められるのがストレスチェック結果の取り扱いです。個人のメンタルヘルスに関わる機微な情報であるため、情報の通知方法や保存、そして提供に際しての同意取得など、細かいルールが定められています。人事労務担当者や産業保健スタッフの皆様の中には、プライバシー保護と健康管理のバランスをどのように取ればよいか、判断に迷う場面もあるのではないでしょうか。当解説記事では、ストレスチェック制度における結果の定義から、通知や保存の具体的な手順、そして個人情報保護のために遵守すべき事項を整理して解説します。

ストレスチェック結果の定義と通知のルール

ストレスチェック結果に含まれる内容

ストレスチェック結果とは、受検者が調査票に記入した内容に基づいて出力される個人の診断結果を指します 。

具体的には、以下の3つの内容が含まれている必要があります。

項目 具体的な内容・定義
個人のストレスプロフィール 職場における心理的な負担の原因、心身の自覚症状、周囲の支援の3領域について、個人の特徴や傾向を数値や図表で示したもの。
ストレスの程度 評価結果に基づき、高ストレスに該当するかどうかを示したもの。
面接指導の要否 医師による面接指導を受ける必要があるかどうかの判定結果。

労働者本人への通知方法

基本原則:
事業者は、ストレスチェックを実施した後、実施者(医師や保健師等)から遅滞なく、直接本人に結果が通知されるようにしなければなりません。通知に際しては、プライバシーの保護が極めて重要です。
配慮すべき項目 具体的な内容・対策
通知方法の厳守 結果は封書や電子メールなど、他の者に内容が見られない方法で個別に通知する必要があります。
周囲への推測防止 特に注意すべきは、面接指導の対象者であるかどうかが周囲に推測されないようにすることです。
配布・配送の工夫 対象者にだけ職場で封筒を手渡しするような方法は避け、全員に同様の形式で配布するか、自宅へ郵送するなどの配慮が求められます。

ICT(インターネット等)を利用して実施している場合、受検直後に画面上で結果を閲覧・保存できる仕組みであれば、改めて個別に通知する必要はありません 。ただし、実施者は必ずすべての結果を確認し、面接指導が必要な者に対しては改めてその旨を通知する義務があります 。ストレスチェックを外部委託する際においても、委託先の実施者による結果確認やその記録の方法について確認すべきといえます。

高ストレス者の選定基準と評価方法

高ストレス者を選定する2つの基準

高ストレス者の選定は、実施者の意見や衛生委員会での審議を踏まえ、事業者が決定します 。一般的には、以下のいずれかに該当する者が選定されます。また、心身の自覚症状が顕著な人を優先的に選ぶのはもちろんですが、基準②のように、現在は症状が出ていなくても「仕事量が非常に多い」「周囲のサポートが全くない」といったリスクを抱える人を見逃さないようにすることが重要です 。

判定基準 具体的な定義・判定要件
基準その1 心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目の合計点が高い者
基準その2 心身の自覚症状の合計点が一定以上であり、かつ、仕事のストレス要因や周囲のサポートの合計点が著しく高い者

評価結果の示し方

ストレスチェック結果を本人に通知する際は、単に点数を示すだけでなく、レーダーチャートなどの図表を用いて分かりやすく示すことが望ましいとされています 。これにより、本人が自分自身のストレス状況に気づき、セルフケアにつなげやすくすることができます 。

ストレスチェック結果の記録と保存

保存期間と責任主体

ストレスチェックの結果や記録は、適切に保存されなければなりません。保存に関するルールは、労働者の同意の有無によって異なります。

保存のケース 具体的な保存義務・期間
事業者に提供された結果 労働者が同意し、実施者から事業者に提供された結果の記録は、事業者が5年間保存しなければなりません。
実施者が保有する結果 労働者の同意が得られず、事業者に提供されない結果についても、事業者は実施者や実施事務従事者に適切に保存させるための措置を講じる義務があります。この場合も、5年間の保存が望ましいとされています。

情報漏えいを防ぐ保存方法

記録を保存する際は、セキュリティの確保が不可欠です。紙媒体の場合は鍵のかかるキャビネットに保管し、電磁的記録(データ)の場合はパスワード管理を徹底して、実施者や担当の実施事務従事者以外の第三者が閲覧できない状態にしなければなりません 。

嘱託産業医が実施者である場合などは、産業医の診療所等で保管することも可能ですが、その場合でも契約書に保存に関する事務について明記しておく必要があります 。

個人情報の保護と同意取得のタイミング

事業者への結果提供に関する同意

ストレスチェックの結果は、本人の同意なしに実施者から事業者に提供してはならないという厳格な守秘義務があります 。この同意取得には、適切なタイミングと方法が定められています。

  • 同意取得のタイミング:ストレスチェックの実施前や実施時に同意を得ることは不適当です 。必ず、本人が自分自身のストレスチェック結果を確認した後に、個別に同意の有無を確認しなければなりません 。
  • みなし同意:労働者が事業者に対して「面接指導」の申し出を行った場合には、その申し出をもって事業者への結果提供に同意したとみなすことができます 。
項目 具体的な内容・運用ルール
同意取得のタイミング ストレスチェックの実施前や実施時に同意を得ることは不適当です。必ず、本人が自分自身のストレスチェック結果を確認した後に、個別に同意の有無を確認しなければなりません。
みなし同意 労働者が事業者に対して「面接指導」の申し出を行った場合には、その申し出をもって事業者への結果提供に同意したとみなすことができます。

実施事務従事者の範囲と守秘義務

ストレスチェックの事務に携わる「実施事務従事者」は、法律によって守秘義務が課されています 。注意点として、労働者の人事に関して直接の権限を持つ者(社長、専務、人事部長など)は、実施事務従事者になることができません 。

人事担当部署の職員であっても、個別の解雇や昇進の決定権を持たない実務担当者であれば、実施事務従事者になることが可能です 。しかしその場合でも、事務を通じて知り得た情報を人事評価等の他の目的で利用することは厳禁です 。

集団ごとの集計・分析と活用

職場環境改善のための集団分析

事業者は、実施者にストレスチェック結果を一定規模の集団(部や課など)ごとに集計・分析させ、その結果に基づいて職場環境の改善を図るよう努める必要があります(努力義務) 。集団分析によって、どの部署でストレスリスクが高いかを把握し、業務分担の見直しや管理監督者への教育などに活かすことができます 。

少人数グループの取り扱い

集団分析の結果を事業者に提供する際にも、プライバシーへの配慮が必要です。集計単位が10人未満の場合、個人の結果が特定される恐れがあるため、原則としてその集団に属する全員の同意がない限り、分析結果を事業者に提供してはいけません 。10人を下回る場合は、上位の組織単位で集計するなどの工夫が求められます 。

労働者に対する不利益な取扱いの禁止

事業者の責務:
事業者は、ストレスチェックや面接指導で得られた情報を理由として、労働者に不利益な取り扱いをしてはなりません。
具体的には、以下の行為が禁止されています。
禁止の対象となる場面 禁止されている具体的な不利益な取り扱い
受検の有無 ストレスチェックを受検しないことを理由とした不利益な取り扱い。
結果提供の同意 結果の提供に同意しないことを理由とした不利益な取り扱い。
面接指導の希望 面接指導を申し出たことを理由とした不利益な取り扱い。
就業上の措置 ストレスチェック結果のみを理由として、配置転換や解雇などの就業上の措置を講じること。

就業上の措置を講じる場合は、必ず医師による面接指導を実施し、医師の意見を聴取した上で、労働者の実情を考慮して決定しなければなりません 。


ストレスチェック結果の取り扱いは、単なる事務作業ではなく、従業員との信頼関係を築くための重要なプロセスです。適切な情報管理と誠実な対応を行うことが、メンタルヘルス不調の未然防止という制度本来の目的達成につながります。

ストレスチェック業務を担当される人事労務担当者や産業保健スタッフの方は、以下のポイントを再確認しましょう。

管理項目 遵守すべきポイント・詳細
結果の通知 結果の通知は本人に直接、周囲に推測されない方法で行う。
同意の取得 事業者への結果提供の同意は、本人が結果を見た後に個別に取得する。
保存とアクセス制限 保存期間(5年間)を守り、アクセス制限を徹底する。
集団分析の活用 集団分析を活用し、個人特定に注意しながら職場環境の改善につなげる。
不利益取り扱いの禁止 いかなる場合も結果を理由とした不当な不利益取り扱いを行わない。

これらのルールを遵守し、従業員が安心して受検できる環境を整えることで、組織全体の健康度向上を目指しましょう。

ストレスチェック結果に関するよくある質問

Q1. ストレスチェックの結果が本人の同意なしに人事担当者や上司へ勝手に開示されることはありますか?
ありません。ストレスチェックの結果は、まず実施者から本人に対して直接通知されます。会社側がその結果を取得するためには、結果通知の後に本人から個別に結果提供に関する同意を得る必要があります。本人の同意なく会社が結果を閲覧することは、法律で厳格に禁じられています。
Q2. 高ストレス判定が出た場合、結果の通知方法やその後の医師による面接指導への勧奨はどのように行われますか?
高ストレス者への結果通知は、プライバシーに配慮し、封書や暗号化されたメール、専用のウェブシステムなどを通じて本人にのみ届けられます。通知には、医師による面接指導を申し出ることができる旨や、その申し出方法が併記されます。会社側は、誰が高ストレスであったかを知ることはできませんが、実施者の指示の下で、対象者全員に対して面接指導の活用を広く呼びかけることは可能です。
Q3. 法律で義務付けられている結果記録の保存期間と、情報の漏洩を防ぐための適切な保管方法を教えてください。
ストレスチェックの結果記録は、5年間の保存義務があります。本人の同意を得て会社が保管する場合は、鍵のかかるキャビネットや、アクセス制限を設けたサーバー内など、担当者以外が閲覧できない場所に厳重に保管しなければなりません。また、外部委託先に保存を委託する場合も、規程でその旨を明記し、適切に管理されているかを確認する必要があります。
Q4. 同意を得て取得した結果を社内で扱う際、情報の閲覧権限や担当者の範囲はどのように設定すべきですか?
結果を閲覧できるのは、実務を担当する実施事務従事者に限定し、それ以外の一般社員や人事権を持つ上司がアクセスできないよう厳格に管理しなければなりません。システム上で管理する場合は、個人識別子による権限分けを行い、情報のファイアウォールを築くことが、従業員の信頼を得る上でも重要です。
Q5. 結果や高ストレスであるという情報を理由に、解雇や降格といった不利益な取り扱いをすることは認められますか?
認められません。ストレスチェック制度は従業員の健康管理と職場環境の改善を目的としたものであり、結果を人事評価や処遇の判断材料に使うことは禁止されています。本人が面接指導を申し出たことや、高ストレス判定を受けたことを理由に、不当な配置転換や昇進の見送りなどの不利益な取り扱いを行うことは法令違反となります。
Q6. 集団分析の結果を職場改善に活用する際、結果の共有範囲や取り扱いで注意すべき点は何ですか?
集団分析の結果を共有する際は、原則として10人以上の単位で集計し、個人の回答内容が推測されないように配慮しなければなりません。分析結果を各部署の管理職にフィードバックする際は、それが特定の個人を探すことや管理職の評価に使われるのではなく、あくまで働きやすい職場づくりのための支援ツールであることを周知し、建設的な議論に活用することが重要です。
Q7. 結果を他の健康診断データと紐づけて、総合的な健康管理のデータとして分析に活用することは可能ですか?
本人の同意があれば可能ですが、紐づける目的を明確にし、あらかじめ実施規程などで定めておく必要があります。個人の健康状態を多角的に把握することで、より的確な産業医の面談や保健指導に繋げられるメリットがありますが、情報の取り扱いには通常以上の厳重なセキュリティ対策が求められます。