定期健康診断結果報告書を作成する時期になると、多くの人事労務担当者や産業保健スタッフが、有所見者数の正確な算定方法や、新しく始まる電子申請の対応に頭を悩ませることでしょう。当解説記事では、定期健康診断結果報告書の正しい記入方法から、2025年1月に施行された電子申請の原則義務化への備えまで、実務に直結する情報を詳しく整理しました。
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定期健康診断結果報告書の提出義務と対象事業場の判定基準
労働安全衛生法および労働安全衛生規則に基づき、事業者は実施した健康診断の結果を所轄の労働基準監督署長に報告しなければなりません。この報告に使用されるのが、定期健康診断結果報告書(様式第6号)です。提出の第一の基準は、その事業場の規模にあります。
| 項目 | 詳細・具体的な内容 |
|---|---|
| 提出義務の基準 | 提出義務があるのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。 |
| カウントの単位 | ここで重要なのは、会社全体の人員数ではなく、支店や工場、営業所といった事業場単位でカウントするという点です。 |
| 具体例 | 例えば、全社で100人の従業員がいても、本社に30人、支店に70人という体制であれば、報告書の提出が必要なのは50人を超えている支店のみとなります。 |
|
50人未満の事業場 における注意点 |
ただし、50人未満の事業場であっても、健康診断そのものの実施義務や、健康診断個人票の5年間保存義務、異常所見者への医師の意見聴取義務は免除されないため、注意が必要です。 |
提出の時期については、健康診断を実施した後、遅滞なく行うよう定められています。行政の実務上は、健診実施からおおむね1ヶ月以内が目安とされており、健診機関から結果が届き次第、速やかに集計作業へ移行することが求められます。
常時50人以上のカウント方法と事業場単位の考え方
常時使用する労働者の範囲には、正社員だけでなく、以下の条件を満たすパートタイム労働者やアルバイトも含まれます。
| 項番 | 常時使用する労働者の具体的な条件 |
|---|---|
| 1 | 期間の定めがない契約である、または契約期間が1年以上(特定業務の場合は6ヶ月以上)見込まれる者。 |
| 2 | 週の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者。 |
また、派遣労働者については、派遣先の事業場で実際に就業している人数としてカウントします。これは、派遣先においても安全衛生管理体制を整備する義務があるためです。一時的な繁閑による増員を除き、常態として使用されている労働者の実情に基づいて判断してください。
定期健康診断報告書の項目別記入実務とポイント
報告書の作成にあたっては、厚生労働省のホームページ等から提供されている最新の様式を使用します。記入項目は多岐にわたりますが、特に行政統計として重要視される項目での誤記が目立ちます。
①労働保険番号欄の入力方法
労働保険番号は雇用保険の適用事業所番号と混同されやすいですが、労働保険番号は14桁(2桁-1桁-2桁-6桁-3桁)で構成される番号です。継続事業一括認定を受けている事業場の場合は、被一括事業場の整理番号まで正確に記入してください。
都道府県:労働保険番号の上2桁を入力します。
所掌:労働保険番号の上から3桁目を入力します。
管轄:労働保険番号の上から4、5桁目を入力します。
基幹番号:労働保険番号の上から6桁~11桁目までを入力します。
枝番号:労働保険番号の上から12桁~14桁目までを入力します。
被一括事業場番号:労働保険を継続一括している場合は、被一括事業場番号を入力します。
②対象年の入力方法
対象年(元号):対象年(元号)を選択します。
対象年(年):対象年(年)を入力します。
対象年 月~月分:1年を通じ順次健康診断を実施して、一定期間分をまとめて報告する場合にその報告期間を入力します。
報告 回目:当該年において、本報告書の提出が何回目になるのか記入します。
③健診年月日の入力方法
健診年月日(元号):健診年月日(元号)を入力します。健診が数日間にわたる場合など、一定期間についてまとめて報告するときは報告日に最も近い健診年月日を入力します。
健診年月日(年・月・日):健診年月日を入力します。1桁目は7(平成)又は9(令和)を入力します。
④事業の種類/事業場の名称の入力方法
⑤事業場の所在地の入力方法
⑥健康診断実施機関・在籍労働者数の入力方法
健康診断実施機関の名称:健康診断実施機関の名称を入力し、複数の実施機関で実施した場合は最大10件までその全てを入力します。
健康診断実施機関の所在地:健康診断実施機関の所在地を入力し、複数の実施機関で実施した場合はその全てを入力します。
在籍労働者数:検診年月日欄に入力した日現在の常時使用する労働者数を入力します。事業場(労働者50人以上)単位で報告が必要で、一企業で複数の事業場を有している場合の在籍労働者数は企業の全労働者数でないことに注意が必要です。受診労働者数には、そのうち実際に受診した人数を記入します。会社が指定した健診機関で受診した人数だけでなく、個人で人間ドックを受診し、その結果の写しを会社に提出した労働者も含めることができます。受診率が100パーセントに達していない場合、未受診者へのフォローアップや受診勧奨の状況が問われることがあるため、産業保健スタッフは未受診の理由(休職中、長期出張中など)を把握しておくことが重要です。
⑦労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる業務に従事する労働者数の入力方法
労働安全衛生規則第13条第1項第3号に掲げる業務とは、身体への負担や健康リスクが特に高いとされる特定の「有害な業務」を指します。この規定は、事業場に「専属の産業医」を配置すべき基準を定める上で非常に重要な役割を持っています。具体的な業務には、高熱や寒冷な場所での作業、放射線、異常気圧、激しい振動、重量物の取り扱い、騒音、粉じんが発生する場所での作業が含まれます。また、鉛、水銀、慢性中毒を引き起こす化学物質の取り扱い、病原体による汚染のリスクがある作業、坑内での業務なども対象です。それそれの入力方法は下記表をご参考になさってください。
| 区分・業務名称 | 記入内容の詳細および注意点 |
|---|---|
| イ 多量の高熱物体、著しく暑熱な場所 |
「多量の高熱物体を取り扱う業務、及び著しく暑熱な場所における業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| ロ 多量の低温物体、著しく寒冷な場所 |
「多量の低温物体を取り扱う業務、及び著しく寒冷な場所における業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| ハ ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線 |
「ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所 |
「土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| ホ 異常気圧下 |
「異常気圧下における業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| へ さく岩機、鋲(びょう)打機等の使用 |
「さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| ト 重量物の取扱い等重激な業務 |
「重量物の取扱い等重激な業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所 |
「ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| リ 坑内における業務 |
「坑内における業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| ヌ 深夜業を含む業務 |
「深夜業を含む業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| ル 水銀、砒(ひ)素、...有害物を取り扱う業務 |
「水素、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| ヲ 鉛、水銀、クロム、...有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所 |
「鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| ワ 病原体によって汚染のおそれが著しい業務 |
「病原体によって汚染の恐れが著しい業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
| カ その他厚生労働大臣が定める業務 |
「その他厚生労働大臣が定める業務」に従事する労働者数を記入します。 イからカに該当する業務を複数行っている労働者については、主たる業務の欄に計上します。 |
⑧健康診断項目の入力方法
定期健康診断結果報告書の「実施者数」と「有所見者数」の欄は、労働基準監督署が事業場の健康管理状況を把握するための重要な項目です。
実施者数:各検査項目を実際に受診した労働者の総数を記入します。全受診者数ではなく、項目ごとに「実際にその検査を受けた人数」をカウントするため、項目を中途でキャンセルした人などは含めない点に注意が必要です。
有所見者数:検査結果が「異常なし(正常)」以外の判定であった人数、つまりそれぞれの項目で異常が認められた延べ人数を記入します。
所見のあった者の人数:他覚所見および歯科健診を除くすべての検査項目のうち、いずれか一つでも所見があった労働者の実人数を記入します。例えば、一人の労働者が血圧と血糖の両方で所見があったとしても、実人数としては1人とカウントします。このため、各項目の有所見者数の合計よりも、実人数の数値の方が小さくなるのが一般的です。論理的に、実人数が特定の個別項目の有所見者数よりも少なくなることはありません。
医師の指示人数:健康診断の結果に基づき、医師が要医療(治療が必要)、要精密検査、生活指導、または保健指導などの具体的な医学的指示を行った労働者の実人数を記入します。
| 健康診断項目 | 記入内容の詳細および注意点 |
|---|---|
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聴力検査(1000Hz) (オージオメーターによる検査) |
聴力検査1000Hzの実施者数と有所見者数を入力します。 |
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聴力検査(4000Hz) (オージオメーターによる検査) |
聴力検査4000Hzの実施者数と有所見者数を入力します。 |
|
聴力検査 (その他の方法による検査) |
聴力検査(その他の方法による検査)の実施者数と有所見者数を入力します。 |
| 胸部エックス線検査 | 胸部エックス線検査の実施者数と有所見者数を入力します。 |
| 喀痰検査 | 喀痰検査の実施者数と有所見者数を入力します。 |
| 血圧 | 血圧検査の実施者数と有所見者数を入力します。 |
| 貧血検査 | 貧血検査の実施者数と有所見者数を入力します。 |
| 肝機能検査 | 肝機能検査の実施者数と有所見者数を入力します。 |
| 血中脂質検査 | 血中脂質検査の実施者数と有所見者数を入力します。 |
| 血糖検査 | 血糖検査の実施者数と有所見者数を入力します。 |
| 尿検査(糖) | 尿検査(糖)の実実施者数と有所見者数を入力します。 |
| 尿検査(蛋白) | 尿検査(蛋白)の実施者数と有所見者数を入力します。 |
| 心電図検査 | 心電図検査の実施者数と有所見者数を入力します。 |
⑨産業医欄の入力方法
産業医氏名:産業医の氏名を入力します。
産業医所属機関の名称及び所在地:産業医の所属機関の名称及び所在地を入力します。
※上記は派遣労働者を含め労働者数が50人以上いる場合には記入が必要です。
※令和2年の法改正により、産業医の押印は廃止されています。
⑩署名・宛名の入力方法
帳票記入年月日:帳票の記入年月日を記入します。
事業者職・氏名:事業者職氏名を入力します。
帳票提出労働基準監督署名:帳票提出労働基準監督署名を入力します。
2025年1月からの電子申請義務化への実務対応
デジタル庁および厚生労働省が推進する行政手続きのデジタル化により、2025年1月1日から、定期健康診断結果報告書を含む一部の労働安全衛生法関係の手続きについて、電子申請が原則として義務化されました。これまでは紙媒体やCD-R等での提出も広く行われてきましたが、今後は政府の総合窓口であるe-Govを通じた申請が標準となります。
【参考】オンライン利用促進(厚生労働省)
電子申請のメリットと事前準備のアカウント取得
電子申請への移行は、事業者に多くのメリットをもたらします。まず、労働基準監督署へ直接足を運ぶ手間や郵送コストが削減されます。また、システム上での入力チェック機能により、必須項目の記入漏れや数値の論理的な矛盾などのエラーが送信前に検知されるため、差し戻しのリスクが大幅に低減します。
電子申請を行うためには、事前準備として電子証明書やログインアカウントの設定が必要です。特に、法人共通の認証基盤であるGビズID(gBizIDプライムまたはメンバー)を取得しておくと、他の社会保険手続き等と共通で利用できるため効率的です。また、令和2年の法改正により、産業医の押印が廃止されたことで、電子申請時に必要だった電子署名も不要となっており、利便性が向上しています。
厚生労働省「入力支援サービス」を活用した効率的な申請フロー
厚生労働省は、労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービスを提供しています。このサービスを利用すると、画面上のガイダンスに従って数値を入力するだけで、正しくフォーマットされた報告書データを作成できます。
【参考】労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス(厚生労働省)
作成したデータは、そのままe-Govと連携して電子申請を行うことが可能です。また、入力した情報を自社のパソコンに保存しておくことで、次年度以降の報告書作成時に基本情報(事業場名や労働保険番号など)を再利用でき、事務作業の効率化を図ることができます。電子申請が困難な事情がある場合の経過措置として当面は書面による提出も認められますが、一時的な措置であるため、早期のDX(デジタルトランスフォーメーション)対応が望まれます。
産業医との連携と健康診断結果の活用方法
定期健康診断結果報告書の提出は、単なる行政への事務作業ではありません。これは、事業場の健康管理体制が適切に機能しているかを確認し、産業医と連携して具体的な職場改善につなげるための重要なプロセスです。
健康診断後の意見聴取と事後措置の重要性
健康診断の結果、異常所見があった労働者については、健康診断実施日から3ヶ月以内に医師(産業医)から意見を聴取しなければなりません。これは労働安全衛生法第66条の4に基づく法的義務です。産業医は、個人の健康状態、作業内容、作業環境を考慮し、通常勤務が可能か、就業制限や配置転換が必要かといった就業判定を行います。
事業者はこの意見に基づき、必要な事後措置を講じるとともに、その内容を健康診断個人票に記載しなければなりません。報告書に記載する医師の指示人数には、こうした産業医による具体的な医学的介入の成果が反映されることになります。
報告データを活用した健康経営の推進と職場改善
作成した報告書のデータは、衛生委員会での審議資料として活用することが強く推奨されます。単年の結果だけでなく、過去数年分の有所見率の推移を分析することで、その事業場特有の健康課題が見えてきます。
| 活用例 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 客観的データに基づく背景の推測 | 例えば、血圧の有所見率が特定の部署で上昇している場合、その部署での長時間労働の発生や、塩分の多い食習慣、運動不足といった背景が推測されます。 |
| 健康経営の第一歩(具体的施策) | これらの客観的なデータに基づき、健康セミナーの開催や職場巡視による環境改善、あるいは社員食堂のメニュー改善といった具体的な施策を展開することが重要です。 |
| 評価項目と認定への影響 | 健康経営優良法人の認定を目指す企業にとっても、定期健診の受診率や事後措置の実施状況は必須の評価項目です。報告業務を適切に行う必要があります。 |
| 目指すべきゴール | 健診結果を経営課題として捉え直すことで、従業員のウェルビーイング向上と企業の生産性向上の両立を目指してください。 |
定期健康診断報告書に関するよくある質問
当解説記事で紹介した算定ルールや最新の電子申請の仕組みを正しく理解し、毎年の報告業務をより円滑に進め、価値のある健康管理活動に繋げていただけると幸いです。










