一次予防・二次予防・三次予防とは?職場のメンタルヘルス対策・健康管理における3段階の違いと具体的な取り組みを解説

公開日: 最終更新日: 執筆:一般社団法人メンタルセーフティー推進機構
人事労務担当者・産業保健スタッフ向けの「一次予防・二次予防・三次予防」を解説したアイキャッチ画像

職場のメンタルヘルス対策や健康経営の文脈で「一次予防・二次予防・三次予防」という言葉を耳にする機会は多いものの、それぞれの定義・違い・具体的にどのような取り組みが当てはまるのかについて、体系的に整理できていないという人事労務担当者や産業保健スタッフの方は少なくないのではないでしょうか。当解説記事では、予防医学における一次・二次・三次予防の起源と定義から、厚生労働省のメンタルヘルス指針における位置づけ・各段階の具体的な取り組み・ストレスチェック制度や健康診断との関係・3段階を連動させる実務のポイントまでを、厚生労働省の情報をもとにわかりやすく解説します。


 

💡 この記事でわかること
  • 1一次予防・二次予防・三次予防それぞれの定義と、介入する「対象労働者」や「時期」による3段階の明確な違いがわかります。
  • 2各予防段階における「ストレスチェック」や「一般健康診断」の役割、および職場環境改善や面接指導といった具体的な取り組みが整理できます。
  • 3これら3つの予防段階を相互に連動させて対策の実効性を高める実務のポイントと、厚生労働省が推奨する「4つのケア」との深い関係性が理解できます。

一次予防・二次予防・三次予防の起源と基本概念

一次予防・二次予防・三次予防という3段階の分類は、予防医学の基本的な概念として広く使われています。その起源と基本的な意味を最初に確認しておきましょう。

予防医学の概念と歴史的背景

予防医学とは、病気を未然に防いだり、病気の進行を遅らせたり、社会復帰を支援したりする医学の一分野です。病気になってから治療する「治療医学」に対置される概念として位置づけられています。

一次・二次・三次という3段階の予防概念は、1960年代にアメリカの公衆衛生学者リーベル(H.R.Leavell)とクラーク(E.G.Clark)が提唱したものであり、現在でも公衆衛生・医療・産業保健の分野で世界的に広く採用されています。3段階の分類の基本的な考え方は「疾病の発生前から進行段階まで、介入の時期と対象に応じた予防戦略を明確に区別する」というものです(安全衛生マネジメント協会・用語解説)。

一次・二次・三次予防の基本的な定義

3段階それぞれの基本的な定義は以下のとおりです。

  • 一次予防
    病気や傷害を未然に防止することです。厚生労働省の「こころの耳」用語解説では「病気や傷害を未然に防止することです。具体的には、生活習慣や環境の改善、健康教育、予防接種等による疾病予防や健康増進、また、事故防止により傷害の発生を予防したりすること」と定義されています(厚生労働省・こころの耳「用語解説:一次予防」)。
  • 二次予防
    病気の早期発見・早期治療を促し、重症化を防ぐことです。自覚症状はないものの、すでに病気になりつつある段階が対象であり、スクリーニング(健康診断等)による早期発見と早期治療への連結が中心となります。
  • 三次予防
    治療過程においてリハビリテーションや保健指導を行うことにより、社会復帰を促したり再発を防止したりすることです。既に疾病が発症し治療段階にある者を対象として、機能の回復・維持と社会復帰支援を行います(厚生労働省・こころの耳「用語解説:三次予防」)。
一次予防・二次予防・三次予防における対象の状態、目的、関連するキーワードの概要図
一次予防・二次予防・三次予防の概要

メンタルヘルス指針における一次・二次・三次予防の位置づけ

厚生労働省のメンタルヘルス指針(労働者の心の健康の保持増進のための指針、平成27年11月30日改正)は、職場のメンタルヘルスケアを推進するうえで、この3段階の予防の概念を明確に取り込んでいます。

指針は「ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する『一次予防』、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う『二次予防』及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援等を行う『三次予防』が円滑に行われるようにする必要がある」と定めており(同指針第2項)、3段階すべてを継続的かつ計画的に実施することを事業者に求めています。

また厚生労働省のシンポジウム資料(mental_sympo_2025)は、職場のメンタルヘルス対策の体系として以下のように整理しています。

一次予防(メンタルヘルス不調の未然防止)としては、労働者のストレスマネジメントの向上として教育研修・情報提供・セルフケア等、および職場環境等の把握と改善として過重労働による健康障害防止・ラインケア・パワハラ対策等が含まれます。二次予防(メンタルヘルス不調の早期発見と適切な対応)としては、上司・産業保健スタッフ等による相談対応・早期発見と適切な対応等、およびストレスチェック制度が含まれます。三次予防(職場復帰支援)としては、職場復帰支援プログラムの策定・実施および主治医との連携等が含まれます(厚生労働省「メンタルヘルス対策の体系」資料、2025年)。

一次予防:メンタルヘルス不調の未然防止

一次予防は3段階の中で最も幅広い取り組みをカバーしており、「まだ不調になっていない健康な状態の労働者全員」を対象とします。指針でいう「一次予防の推進」こそが、メンタルヘルス対策の本来の核心であり、ストレスチェック制度はこの一次予防を目的として設計されています。

一次予防の具体的な取り組み

職場における主な一次予防の取り組みとして以下が挙げられます。

一次予防の具体策 具体的な取り組み内容および実施目的の詳細
教育研修・情報提供 教育研修・情報提供として、ストレスに関する基礎知識の提供・セルフケアの方法・ストレスへの気づき方・相談窓口の周知などを、管理職を含む全従業員を対象に実施します。
職場環境の改善 職場環境の改善として、労働時間の短縮・過重労働の防止・有給休暇取得促進・ハラスメント対策・仕事の裁量度・役割の明確化など、ストレスの根本原因を職場環境の視点から改善する取り組みです。
ストレスチェックの実施 ストレスチェックの実施として、労働安全衛生法第66条の10に基づくストレスチェックは「一次予防」の代表的な手段として位置づけられており、個人のストレスへの気づきを促すとともに、集団分析結果を職場環境改善につなげることが目的です(厚生労働省・こころの耳「用語解説:一次予防」)。
セルフケアの推進 セルフケアの推進として、労働者自身がストレスに気づき対処できる能力を高めること(セルフケア)も一次予防の重要な柱です。

一次予防が最も重要とされる理由

一次予防が最も重要とされるのは、「不調が生じてから対応する」よりも「不調が生じないようにする」ほうが、労働者の健康・企業の生産性・医療コストのすべての面でコスト効率が高いためです。精神障害による労災認定件数が令和5年度に過去最高を更新するなど(独立行政法人労働者健康安全機構「職場における心の健康づくり」2025年7月版、p.3)、二次・三次予防に至るケースが増え続けている現状は、一次予防への取り組みが十分でない事業場が多いことを示しています。

二次予防:早期発見と適切な対応

二次予防は、メンタルヘルス不調が発生しつつある段階または初期段階にある労働者に対して、早期に発見・対応することを目的とします。「すでに何らかの兆候はあるが、まだ深刻化していない」段階が対象です。

二次予防の具体的な取り組み

二次予防の具体策 具体的な取り組み内容および実施目的の詳細
ストレスチェック後の高ストレス者への対応 ストレスチェック後の高ストレス者への対応として、ストレスチェックの結果で高ストレスと判定された労働者が面接指導の申出をした場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません(労働安全衛生法第66条の10第3項)。これは個人へのアプローチとして、二次予防の中核を担う取り組みです。
管理監督者による「いつもと違う」部下への気づきと相談対応 管理監督者による「いつもと違う」部下への気づきと相談対応として、遅刻・欠勤の増加・業務効率の低下・表情の変化・コミュニケーションの減少など「いつもと違う」様子への日常的な気づきと声かけがラインによるケアの中心であり、二次予防として機能します(独立行政法人労働者健康安全機構「職場における心の健康づくり」2025年7月版、pp.16〜17)。
産業保健スタッフによる相談対応 産業保健スタッフによる相談対応として、産業医・産業保健師が個別保健指導・健康相談を通じて不調の初期段階にある労働者を把握し、必要に応じて医療機関への受診を促す取り組みも二次予防に含まれます。
相談窓口の整備 相談窓口の整備として、社内・社外を含めた相談窓口を整備し、労働者が自発的に相談しやすい環境をつくることも二次予防の重要な要素です。

二次予防の難しさ:「気づき」がカギ

二次予防の最大の課題は「早期の気づき」です。メンタルヘルス不調は本人が自覚しにくい場合があり、また「忙しいのは自分だけではない」と問題を軽視する傾向も見られます。管理監督者が日常的に部下の変化に気づく感度を持つことと、気づいた際に気軽に相談できる産業保健スタッフとの連携体制の整備が、二次予防の実効性を左右します。

三次予防:職場復帰支援と再発防止

三次予防は、メンタルヘルス不調により休業した労働者が、円滑に職場復帰し就業を継続できるよう支援するとともに、再発を防止することを目的とします。

三次予防の具体的な取り組み

三次予防の具体策 具体的な取り組み内容および実施目的の詳細
職場復帰支援プログラムの策定・実施 職場復帰支援プログラムの策定・実施として、メンタルヘルス指針は「衛生委員会等において調査審議し、職場復帰支援プログラムを策定するとともに、その実施に関する体制整備やプログラムの組織的かつ計画的な取り組みにより、労働者に対する支援を実施」することを事業者に求めています(同指針第6項(4))。
主治医との連携 主治医との連携として、復職の可否判断・職場での配慮事項の確認・就業上の措置の実施において、主治医(精神科・心療内科等)との連携が不可欠です。
産業医の意見書に基づく就業上の措置 産業医の意見書に基づく就業上の措置として、復職後の業務量・残業・深夜業の制限・配置転換等の就業上の配慮を、産業医の意見を踏まえて実施します。
再発防止の仕組み 再発防止の仕組みとして、一度の職場復帰で終わりにせず、再発リスクを把握・管理するフォローアップ体制(定期的な産業保健スタッフとの面談等)の整備が重要です。

三次予防における「再発防止」の観点

三次予防で特に重要なのは「再発防止」の視点です。メンタルヘルス不調、特にうつ病は再発率が高い疾患であり、一度復職できても数か月以内に再休業に至るケースは少なくありません。休職に至った背景にある職場側の問題(過重労働・ハラスメント・職場の人間関係等)を個人の問題として片付けず、職場全体の課題として捉えて職場環境改善につなげることが、三次予防を真の意味で機能させるためのポイントです。この観点からは、三次予防と一次予防は循環的な関係にあるといえます。

健康診断・健康管理における3段階の整理

3段階の予防概念は、メンタルヘルス対策だけでなく、生活習慣病等の身体的な健康管理においても同様に適用されます。

健康診断・健康管理における一次予防・二次予防・三次予防の取り組み例と概要
健康診断・健康管理における予防の三段階

健康診断は、受診行為そのものは二次予防(早期発見)ですが、健診結果をもとに生活習慣改善を促す保健指導は一次予防の側面もあり、境界は文脈によって異なる場合があります。

3段階を連動させることが実効性のカギ

3段階の予防は独立した取り組みではなく、相互に連動することで初めて実効性が高まります。

  • 一次予防が不十分だと不調者が増え、二次予防・三次予防の負担が増大します。
  • 二次予防(早期発見・対応)が機能しないと、一次予防だけでは防げなかった不調者が深刻化し三次予防の対象が増えます。
  • 三次予防(職場復帰支援)の経験から休職に至った職場の問題点を分析し、一次予防(職場環境改善)にフィードバックすることで、組織全体のメンタルヘルス水準が底上げされます。

この「一次→二次→三次、そして三次の経験が一次に還元される」という循環構造を意識することが、単発の取り組みにとどまらない継続的なメンタルヘルス対策の設計において重要です。

実務的な連動のポイントとして、ストレスチェックの集団分析を一次予防(職場環境改善)に活用すること、相談しやすい環境づくりが二次予防の早期発見につながること、三次予防の職場復帰支援のプロセスで把握した職場課題を衛生委員会での審議(一次予防の改善策策定)に反映させることが挙げられます。

4つのケアと一次予防・二次予防・三次予防の関係

厚生労働省のメンタルヘルス指針が定める「4つのケア」(セルフケア・ラインによるケア・事業場内産業保健スタッフ等によるケア・事業場外資源によるケア)は、3段階の予防すべてにわたって機能します。

4つのケア 予防医学・産業保健の段階における具体的な関わり・役割の詳細
セルフケア 一次予防(自らのストレスに気づいて対処する)・二次予防(自覚した不調を相談・受診につなぐ)の両段階に関わります。
ラインによるケア 一次予防(職場環境改善・日常的なコミュニケーション)・二次予防(「いつもと違う」部下への気づきと相談対応)・三次予防(復職後のフォローアップ)の3段階すべてに関わります。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア 3段階すべてにわたる中心的な役割を担います。
事業場外資源によるケア 主に二次・三次予防において、医療機関・EAP・産業保健総合支援センター等との連携として機能します。

一次・二次・三次予防に関するよくある質問

Q ストレスチェックは一次予防ですか、二次予防ですか?
A

ストレスチェック制度は、主として一次予防を目的として設計されています。厚生労働省は「労働者のストレスへの気づきを促すとともに、ストレスの原因となる職場環境の改善につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調の未未然防止(一次予防)を図ることを目的としています」と明記しています(労働安全衛生法第66条の10及び関連資料)。一方で、高ストレス者への医師面接指導は不調の初期段階への介入という意味で二次予防の側面もあります。実務上は「ストレスチェックは一次予防のためのツール」と理解することが基本です。

Q 定期健康診断は何次予防ですか?
A

定期健康診断は主として二次予防(早期発見)に位置づけられます。ただし、健康診断の結果をもとに保健師や産業医が生活習慣改善の指導を行う場合は一次予防の側面も含まれます。また、有所見者への受診勧奨・精密検査の案内も二次予防の重要な構成要素です。健康診断を「受けさせれば終わり」ではなく、事後措置(受診勧奨・就業上の措置・保健指導)とセットで取り組むことで、二次予防としての機能を最大化できます。

Q 職場復帰支援(リワーク)はすべて三次予防ですか?
A

職場復帰支援は三次予防の代表的な取り組みです。ただし復職後の再発防止策の一環として職場環境の改善(過重労働対策・ハラスメント対策等)を行う場合は、その改善が職場全体の一次予防につながります。三次予防が一次予防に還元されるこの循環が、メンタルヘルス対策の水準向上において重要な意味を持ちます。

Q 一次予防のコストと二次・三次予防のコストはどちらが大きいですか?
A

一般的には一次予防への投資がコスト効率は高いとされています。経済産業省の調査でも、プレゼンティーイズム(不調を抱えながら働くことによる生産性低下)による損失は医療費・欠勤コストを大幅に上回るとされており、不調の発生そのものを防ぐ一次予防への投資は長期的に大きなリターンをもたらします。一方で二次・三次予防が不十分だと不調者の重症化・長期休業につながり、その方が企業にとってはるかに大きな損失となります。

Q 小規模事業場でも3段階の予防を実施できますか?
A

実施できます。規模の制約はあっても、段階別に実施可能な取り組みがあります。一次予防として管理職向けラインケア研修・ストレスチェックの実施(2028年4月から50人未満も義務化)・「こころの耳」等の外部相談窓口の周知が実施できます。二次予防として管理職が「いつもと違う」部下に気づく体制・地域産業保健センター(さんぽセンター)への相談・医療機関との連携体制が活用できます。三次予防として主治医との連携による段階的復帰支援が実施できます。

Q 「予防」と「治療」の境界はどこですか?
A

一般的に一次予防・二次予防が「予防」の領域、三次予防が予防と治療の境界領域に位置します。三次予防は治療が進行中の段階を対象とするため「治療に付随する予防的介入」という性格を持ちます。職場における産業保健の文脈では、精神科・心療内科での治療(休業中の医療行為)は治療医学 of 領域であり、職場での復職支援・再発防止の取り組みが三次予防として位置づけられます。

Q 安全衛生対策(労働災害防止)でも3段階の予防概念は使われますか?
A

使われます。安全衛生の文脈では、一次予防が危険源の除去・リスクアセスメントによる事故の未然防止、二次予防が危険発生時の迅速な対処・軽微な段階での医療介入、三次予防がリハビリテーションによる機能回復・職場復帰支援に対応します。ヒヤリハット活動も一次予防の実践として位置づけられます。

3段階の予防を「知識」から「実践」へ

一次予防・二次予防・三次予防という3段階の概念は、職場のメンタルヘルス対策・健康管理のあらゆる取り組みを整理するための有効な枠組みです。「今やっているこの取り組みは何次予防にあたるか」を意識することで、自社の対策がどの段階に偏っているか・どの段階が手薄かが見えてくるようになります。

厚生労働省のメンタルヘルス指針は、3段階すべてが「継続的かつ計画的に実施されること」を求めています。二次・三次予防に追われるばかりで一次予防への投資が不足していないか、三次予防(職場復帰支援)の経験が一次予防(職場環境改善)に十分フィードバックされているか——こうした視点で自社の取り組みを棚卸しすることが、実効性の高いメンタルヘルス対策・健康管理体制の構築への第一歩となります。

一次・二次・三次予防に関する主要情報へのクイック参照表(リンク集)