ストレスチェック制度の義務化は、労働安全衛生法の改正によって2015年12月から開始し、約10年を経た2025年にさらなる法改正の成立により、2028年からは50人未満の小規模事業場においても義務化されることが決定しました。
50人をラインとして、「制度がどのように変わるのか?」「自社はいつから対象になるのか?」「実施しない場合の罰則は?」といった不安を抱える人事労務担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、現行ルールの再確認から、2028年に向けた新ルールへの対策、具体的な施策、今後のストレスチェック制度でよくある質問まで幅広く解説します。
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ストレスチェック制度に関する用語集
まずストレスチェックに関する厚生労働省資料や指針によく見られる用語を確認しましょう。
| 用語・カテゴリ | 定義・内容(詳細) |
|---|---|
| ストレスチェック | 労働安全衛生法第66条の10第1項に規定された「心理的な負担の程度を把握するための検査」を指します。同項は心理的な負担の程度を把握するための検査等について定められています。 |
| 事業者 |
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| ストレスチェックの実施者 |
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| 産業医等 | 産業医、および事業場において産業保健活動に従事している医師を指します。 |
| 産業保健スタッフ | 事業場において、労働者の健康管理等の業務を行う産業医、保健師、看護師、衛生管理者等をいいます。この度のストレスチェック義務化では、それぞれの立場で携わることができる業務内容が異なりますので留意が必要です。 |
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ストレスチェックの共同実施者、実施代表者 |
ストレスチェックの実施者が複数名いる場合の実施者を「共同実施者」といい、この場合の複数名の実施者を代表する者を「実施代表者」と呼称されます。 |
| 実施事務従事者 |
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| 個人のストレスプロフィール | ストレスチェック実施により出力される個人の結果であり、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」などの程度について、個人ごとにその特徴や傾向をレーダーチャート等で示したものをいいます。個人結果表とも呼称されることがあります。 |
| ストレスチェックの評価結果 | ストレスチェック実施により出力される個人の結果であり、個人のストレス度合いの高低を示したもの(高ストレス者に該当するかどうかがわかるもの)をいいます。 |
| ストレスチェック結果の集団的な分析 | 個人のストレスチェック結果を一定の集団(部、課など)ごとに集計して、当該集団の特徴や傾向を分析することを指します。集団的な分析や職場改善については当面、努力義務とされましたが、従業員個人へのストレスチェックと、職場環境改善は両輪の関係にあり、なるべく実施すべきとされています。 |
| ストレスチェック業務の外部機関 | ストレスチェックや面接指導の実施そのもの、または実施における補助的な業務を事業者から業務委託されて実施する事業者外の組織をいい、「メンタルヘルスサービス機関」「健診機関」「健康保険組合」「病院・診療所」「ストレスチェック専門機関」等が挙げられます。 |
まずは最新のストレスチェックマニュアルをチェック!
ストレスチェックマニュアルはこれまでの50人以上版に加えて、50人未満向けの小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアルが新たに公開されました。ストレスチェックマニュアルは厚生労働省により不定期に更新されますので、最新版を用いることが重要です。
50人以上最新版(令和3年2月改訂):労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(厚生労働省)
50人未満最新版(令和8年2月公開):小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(厚生労働省)
ストレスチェックの義務化とは
ストレスチェック制度の義務化とは、平成27年12月1日に施行された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」により設けられた制度です。この制度により、雇用主である企業や団体等の事業者には、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査(従業員へのストレスチェック)と、ストレスの程度が高いと認められ、労働者本人が希望する場合の医師による面接指導の実施等が義務化されました。このストレスチェック制度は、職場のストレスの程度を定期的に可視化し、一定のストレスが認められた労働者には早期に医師へつなぐ、世界的に見ても画期的な制度です。
なお、当記事では、ストレスチェックから面接指導までの一連のながれをストレスチェック制度と総称しています。
2028年までに50人未満事業場もストレスチェック義務化が開始します
2028年までに開始される50人未満事業場へのストレスチェック義務化については、2025年5月に労働安全衛生法が改正され、この公布後、最長3年以内(2028年5月まで)に開始されることとなりました。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-2-「はじめに」を参照)
ストレスチェック義務化の目的(ストレスチェック制度)
制度の目的①:メンタルヘルス一次予防(メンタルヘルス不調リスクの低減)
ストレスチェック制度では、ストレスチェックを受検した従業員本人に、直接的に結果を通知することで従業員自身のストレスの程度についての気付きを促します。従業員によるセルフケアにつなげると同時に、事業者からの相談窓口に関する情報提供や産業保健スタッフによるフォローを行い、メンタルヘルス不調のリスクを事前に低減させていこうとする一次予防の取り組みです。なお、ストレスチェックはうつ等の精神疾患の早期発見が一義的な目的ではないことに注意が必要です。
このように、ストレスチェック制度の根幹にある考え方は、メンタルヘルス対策における「メンタルヘルス一次予防」の強化にあります。
従来の産業保健が不調者の早期発見(二次予防)や休職者の復職支援(三次予防)に重点を置いていたのに対し、ストレスチェック制度は労働者自身が自分のストレス状態に気付くことでセルフケアを促し、さらには検査結果を集団ごとに集計・分析して職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものを低減させることを目的としています。事業者は、この制度を単なる法的義務としてこなすのではなく、従業員のストレス状況の改善や働きやすい職場の実現を通じて、組織全体の生産性向上にもつなげる施策して積極的に活用していくことが望まれます。
制度の目的②:高ストレス者への医師による面接指導
ストレスチェック実施者は従業員が受検したストレスチェック結果を評価し、ストレスの程度が高い者(高ストレス者)には医師による面接指導を受けさせるかの判断を行い(面接指導要否判定)、該当者には面接指導を申し出るよう案内を行います。この判定結果はストレスチェック結果同様に従業員本人にのみ通知されなければなりません。これらはメンタルヘルス不調リスクが高まる恐れがあると推測される高ストレス状態の従業員に対して、セルフケアの喚起だけに留まらず、医師への面接指導や相談の勧奨を行うことで、早期に専門職によるケアにつなげる目的があります。
なお、ストレスチェック実施者は、従業員に対して労働安全衛生法において守秘義務が課されており、従業員本人と実施事務従事者とよばれる実施者を補佐する担当者を除く第三者には、従業員個人のストレスチェック結果は一切開示できません。従業員本人による事業者への同意(結果提供同意)や面接指導の申し出がなされた場合はこの限りではありませんが、理由なく第三者に開示した場合は法令により罰せられることとなります。
制度の目的③:ストレスチェック集団分析と職場環境改善(努力義務)
ストレスチェック制度では、事業者はストレスチェック結果を個人が特定できないよう集団ごとに集計し、職場のストレス状況や原因を分析し、職場環境改善に向けた計画づくりや活動に取り組むことで職場のストレスの発生リスクそのものを低減させていくことが努力義務として求められています。なお、集団分析に基づく職場環境改善は、事業者様が大きな道筋を示し、産業保健スタッフのフォローと共に管理職や一般職が一体となり、継続的に行われる仕組みづくりが必要となります。
50人未満ストレスチェックも制度の目的は変わりません
2028年までに開始される50人未満ストレスチェックにおいても、ストレスチェック制度はメンタルヘルス一次予防を目的とし、ストレスチェックを実施する、高ストレス者への医師への面接指導を行う、また引き続き努力義務ながら集団分析によりそもそもメンタルヘルス不調者の発生を防ぐ職場づくりを行うことに変わりありません。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-3-「0-1 ストレスチェック制度の趣旨・目的」を参照)
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参考 メンタルヘルス予防対策 |
主な目的 | ストレスチェック制度における役割 |
|---|---|---|
| 一次予防 | メンタルヘルス不調の未然防止 | 自身のストレスへの気付き、職場環境の改善 |
| 二次予防 | 不調の早期発見と適切な対応 | 高ストレス者への医師による面接指導 |
| 三次予防 | メンタルヘルス不調者の職場復帰支援 | 本制度の範囲外だが、総合的な取組として連携 |
ストレスチェック対象者の選定
ストレスチェック制度は、現在は常時50人以上の労働者を使用する事業場に対して実施を義務付けていますが、2028年にはすべての事業所で実施が義務化されることとなります。
50人以上のカウント方法と事業場の単位

現在、ストレスチェック実施義務がある事業場において50人をどうカウントするかについては、正社員だけでなく、パートタイム労働者やアルバイトも含めて判断します。具体的には、契約期間の定めの有無や週の労働時間にかかわらず、常態として使用している労働者が50人以上いるかどうかで判断されます。例えば、週1回しか出勤しないアルバイトであっても、継続して雇用し、常態として使用していれば、この50人のカウントに含まれます。
なお、義務の単位は事業者(企業全体)ではなく事業場単位です。そのため、企業全体で50人以上の労働者がいても、一つの支店や営業所の労働者が50人未満であれば、その事業場における実施は2028年までは努力義務となります。ただし、建設現場などのように独立した事業場として機能していない小規模な現場については、営業所や支店といった直近上位の組織を一つの事業場とみなし、その所属労働者数で数えることになります。
50人未満のストレスチェック報告書は?
50人を境にストレスチェックルールが異なる中で、特に大きなポイントとして、後述する労働基準監督署へのストレスチェック報告書(心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書)の提出義務の有無があります。50人未満の事業場のストレスチェックではストレスチェック報告書の提出義務は課されないことになりましたが、増員で50人を超えた場合は報告書提出義務が生じますので注意が必要です。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-6-「0-4 実施義務」を参照)ストレスチェック対象となる労働者の選定
事業場が実施義務の対象となった場合、実際に受検させなければならない労働者の範囲は、一般定期健康診断の対象者と同じ基準で判断します。
なお、労働時間が4分の3未満であっても、概ね2分の1以上の労働者については、実施することが望ましいとされています。
| 基準 | 常時使用する労働者の具体的な要件 |
|---|---|
| 1 | 期間の定めのない労働契約により使用される者 |
| 2 | 1年以上の契約、または更新により1年以上使用されることが予定されている者 |
| 3 | 週の所定労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上である者 |
| 労働者の種別 | カウント(50人)への算入 | 検査実施の義務 |
|---|---|---|
| 正社員 | 算入 | 義務あり |
| パート・アルバイト(4/3以上勤務) | 算入 | 義務あり |
| パート・アルバイト(4/3未満勤務) | 算入 | 努力義務(推奨) |
| 派遣労働者(派遣先において) | 算入 | 努力義務(集団分析) |
| 派遣労働者(派遣元において) | 算入 | 義務あり |
50人未満ストレスチェックでの対象者選定方法は?
50人未満事業場のストレスチェックにおいても、従業員のうち誰をストレスチェック対象者に選定するかの方法は変わりません。日頃、一般定期健康診断を受けている従業員に加えて、上記のルールに該当する勤務体系の従業員を選定するようにしましょう。
安全衛生委員会によるストレスチェック調査審議
ストレスチェック制度を円滑に開始するためには、まず衛生委員会等での会議体による調査審議が不可欠です。事業者は独断で実施方法を決定するのではなく、労使が参加する場において、自社の実態に即したルールを決定し、それを社内規程として明文化しなければなりません。
衛生委員会等でのストレスチェック調査審議
労働安全衛生法第18条に基づき、ストレスチェック制度についても衛生委員会にて以下の事項を調査審議する必要があります。
これらの審議を経て決定した事項は、ストレスチェック規程として明文化し、あらかじめ全労働者に周知しなければなりません。
また、制度の信頼性を保つため、人事権を持つ者が情報の取扱いに不適切に関与しないような仕組みを構築することが強く求められます。
- 制度の目的に係る周知方法
- 実施体制
- 実施方法
- 集団ごとの集計・分析の方法
- 受検の有無の情報の取扱い
- 結果の記録の保存方法とセキュリティの確保
- 不利益な取扱いの防止策 など
産業医や安全衛生委員会のない50人未満事業場は「関係労働者の意見聴取」を実施
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50人未満の事業場は安全委員会や衛生委員会の実施義務がありません。従って、小規模事業場ストレスチェックマニュアルでは、50人以上事業場のストレスチェックに関する調査審議に代わり、関係労働者の意見の聴取という新たな方法が示されました。これは労働安全衛生規則第23条の2に基づいて、安全や衛生について関係労働者の意見を聴く機会を設けることとされており、50人未満はこのような機会を活用して、可能な限り様々な職場からストレスチェック実施についての意見を募ることとされています。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-8-「1-2 関係労働者の意見の聴取」を参照) - 定例ミーティングや朝礼、ヒヤリハット活動の共有会議などの場を活用し、ストレスチェックについて話し合いをしましょう。話し合いの結果は、安全衛生委員会のように議事録の作成と保存までは求められませんが、メモとして残しておくとよいでしょう。
■ ストレスチェック導入に向けた調査審議と50人未満事業場における関係労働者への意見聴取の違い
| 項目 | 50人以上の事業場(現行) | 50人未満の事業場(新制度) |
|---|---|---|
| 主な実施形態 | 衛生委員会(又は安全衛生委員会)での調査審議 | 関係労働者からの意見聴取 |
| 法的根拠 | 労働安全衛生法第18条、規則第22条 | 労働安全衛生規則第23条の2 |
| 参加者・中心人物 | 議長(総括安全衛生管理者等)、労働者委員、産業医、衛生管理者 | 関係労働者(衛生推進者や安全衛生推進者が中心となって実施) |
| 形式の自由度 | 委員会という正式な会議体の構成が必要 | 会議体である必要はなく、実効性のある方法で柔軟に実施可能 |
事業者によるストレスチェック方針の表明
毎年のストレスチェックの実施に当たっては、会社からのメッセージは重要です。特に、経営トップからのストレスチェック実施に関するメッセージ発信やストレスチェック活用に向けた意思表示はとても有効です。経営トップ自らが会社がストレスチェック制度の内容や目的、単に法令や指針に沿った制度に留まらず会社として従業員のメンタルヘルス不調リスクの低減や集団分析による職場環境改善に取り組んでいこうというメッセージは、従業員が安心してストレスチェックを受検できる空気づくりにつながり、職場環境改善に向けた意思統一のきっかけになります。また、安全衛生委員会によるストレスチェック調査審議も、経営トップのメッセージを元に議論することができます。
50人未満の事業場も事業者による方針の表明を行いましょう
方針の表明と聞くとイメージがつきにくいかも知れませんが、従業員にストレスチェックを安心して受けてもらえるようなメッセージと考えてください。厚生労働省マニュアルにてわかりやすい文例が用意されていますので参考にしましょう。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-7-「1-1 事業者による方針の表明」下段を参照)ストレスチェック規程の作成
衛生委員会によるストレスチェック調査審議の結果は、ストレスチェック制度実施規程として文書化します。これには、実施時期、対象者、実施者、面接指導の申出方法などを具体的に記載します。厚生労働省のホームページにはストレスチェック規程例が公開されており、これを参考に各事業場の実態に合わせて調整することが推奨されます。ストレスチェック規程はいわば、会社オリジナルのストレスチェック実施計画書です。どのような内容やながれで進行するのか、また誰がどのように業務へ関与し個人情報は取り扱われるのか等、従業員が安心してストレスチェックに取る組めるよう、また企業にとっても安全にストレスチェック制度を実施していくためのルールブックともいえます。
ストレスチェック調査審議の議事録は、ストレスチェック規程とセット保管が原則です
各事業場で調査審議を終えて承認された規程案は社内の正式な決裁を行い、正式なストレスチェック規程として取り扱いが開始されます。法令ではストレスチェックは各事業場単位で行われるものとされており、ストレスチェック規程についても各事業場での保存が必要です。また、調査審議を行った安全衛生委員会の議事録もセットで保管しておくことが求められます。
職場のメンタルヘルス対策や職場環境の改善といった分野は、行政も支援や関与を強める重点領域です。最近では労働基準監督署による立ち入り調査の際にはなら必ずといって良いほど、ストレスチェック規程と議事録の確認が行われます。立ち入りの際、規程や議事録を慌てて探すといったことのないよう、各事業場へのフォローや周知を行いましょう。
50人未満事業場は規程の代わりに「社内ルール」策定が求められます
- 50人未満の事業場では、関係労働者の意見収集後、ストレスチェック制度の社内ルールを定めることとされています。主な内容としては、実施体制、実施方法、記録の保存、情報管理、情報の開示、訂正等及び苦情処理、不利益な取扱いの防止について明文化を行い、掲示板やイントラネットへの掲載、書面配布による周知を図ることとされています。
- 従業員にとってストレスチェックは非常にセンシティブに感じられるものです。ストレスチェックに率直に回答したり面接指導を受けたりしても、会社は一切の不利益な取り扱いをしないことを含めて、ストレスチェック制度の詳細を明文化しておくことは、ストレスチェックを受ける従業員の安心感の醸成につながるとともに、後々のトラブル回避にもつながります。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-9-「1-3 社内ルールの作成・周知」を参照)
ストレスチェック実施者と実施事務従事者、実務担当者
ストレスチェック制度には複数の役割が存在し、それぞれに厳格な権限と義務が定められています。
| 役割 | 詳細な職務内容と要件 |
|---|---|
| 1. 実施者 | ストレスチェックの実施を主導する専門家です。実施者になれるのは、医師、保健師、または厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師に限られます。事業場の状況を日頃から把握している産業医が実施者となることが最も望ましいとされています。実施者は、調査票の選定や判定基準の決定について事業者に意見を述べ、個人の結果に基づいて面接指導の要否を確認する役割を担います。 |
| 2. 実施事務従事者 | 実施者の指示に基づき、事務的な作業(調査票の回収、データ入力、結果の通知、記録の保存など)を補助する者です。産業保健スタッフのほか、人事労務部門の一般職員が担当することも可能ですが、情報の取り扱いには細心の注意が必要です。 |
|
3. ストレスチェック制度担当者 (実務担当者) |
自社のストレスチェック制度の実施計画の策定や外部機関との連絡調整など、運用全体を管理する者です。衛生管理者やメンタルヘルス推進担当者が指名されることが一般的です。 |
人事権を持つ者の関与禁止

ストレスチェック制度の公平性とプライバシー保護のため、労働者の解雇、昇進、又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの「実施の事務」に従事してはならないと定められています。具体的には、労働者が記入した調査票の回収や内容の確認、データ入力といった、個人の健康情報を直接扱う作業には関与できません。ただし、制度全体の実施計画の策定や、受検していない労働者への受検勧奨といった、健康情報を扱わない事務については従事することが可能です。
50人未満のストレスチェック実施体制は「委託先が実施者と実施事務従事者を担う」
50人以上と50人未満ストレスチェックの大きな違いの一つとして、50人未満ストレスチェックでは労働者のプライバシー保護の観点から、原則としてストレスチェックの実施を外部機関に委託することが明確に推奨されました。これによってストレスチェック実施者と実施事務従事者を委託先が担い、事業場内では健康情報を取り扱わない実務担当者の設置のみという実施体制となります。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-11-「2 ストレスチェック制度の実施体制・実施方法の決定」を参照)■ 50人未満事業場のストレスチェック実施体制(イメージ)
| 区分 | 担当者(役割) | 具体的な業務内容 |
|---|---|---|
| 事業場 |
事業者 ※事業場のトップ |
|
|
実務担当者 ※衛生推進者や安全衛生推進者が望ましい |
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|
| 外部機関 |
実施者 (医師・保健師等) 実施事務従事者 |
※健康情報を取り扱うため守秘義務あり |
ストレスチェック外部機関には「サービス内容説明書」をもらいましょう
これまで50人以上事業場がストレスチェックを外部機関に委託する際は、チェックリストを用いた事前チェックが推奨されていました。一方、50人未満事業場は外部機関からサービス内容事前説明書をあらかじめ取り寄せ、以下のようなポイントを事前に確認することが求められます。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-13-「2-2 ストレスチェックの委託先の選定・契約」を参照)■ 50人未満事業場がストレスチェック委託先を選定する際の確認事項(サービス内容事前説明書)
| 確認項目 | 具体的な検討・明示事項 |
|---|---|
| 実施体制 | 実施者、実施事務従事者等 |
| 実施方法 | 調査票、調査方法、高ストレス者・面接指導対象者の選定方法、ストレスチェック結果の通知方法、面接指導対象者への通知方法等 |
| 料金体系 | 料金体系、基本料金、オプション料金の明示等 |
| 面接指導 | 面接指導の依頼先、面接指導担当医師、面接指導以外の相談対応等 |
| 情報管理 | 結果通知等の情報の流れ、結果の保存等 |
■ ストレスチェック外部委託 vs 自社実施の比較
| 比較項目 | 外部委託(小規模マニュアルでは推奨が明記) | 自社実施 |
|---|---|---|
| プライバシー | 確保しやすい(外部での情報遮断) | 確保が極めて困難(身近な人がデータを扱う) |
| 事務負担 | 契約のみで済む(低負担) | 配布・入力・判定・保存(高負担) |
| 専門性 | 医師や保健師が関与する場合は知見が即座に活用可能 | 自前で専門資格者を確保・契約する必要あり |
| 法的リスク | 委託先が法令順守を担保 | 自社で常に最新の法改正を把握する必要あり |
| 従業員の安心感 | 会社にバレないという安心感を得やすい | 「社長が見ているのでは」という不信感が生じやすい |
ストレスチェックの実施方法とストレス調査票の選定
実際の検査(ストレスチェック)は、労働者が自記式の調査票に回答する形で行われます。紙媒体を用いる方法と、インターネットや社内ネットワークを利用したICTによる方法のどちらも選択可能です。厚生労働省は職業性ストレス簡易調査票の使用を推奨しています。
調査票に含めるべき3つの領域
法令により、ストレスチェックの調査票には以下の3つの領域に関する項目を必ず含めなければなりません。
| 領域・項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 1. 仕事のストレス要因 | 職場における心理的な負担の原因に関する項目 |
| 2. 心身のストレス反応 | 心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目 |
| 3. 周囲のサポート | 職場における他の労働者による支援に関する項目 |
厚生労働省は、これらを網羅した標準的な調査票として「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」の使用を推奨しています。また、より短い時間で実施可能な「簡略版(23項目)」も示されています。独自の項目を追加することも可能ですが、その場合は一定の科学的根拠に基づき、衛生委員会で調査審議を行い、決定する必要があります。
ストレス調査票に含めるべきでない項目
ストレスチェックは性格検査や適性検査を目的とするものではないため、これらの内容を法に基づくストレスチェックに含めることは不適当です。また、希死念慮(死にたい気持ち)や自傷行為に関する項目についても、専門的な対応体制が不十分な場合には含めるべきではないとされています。
インターネットを利用したストレスチェックの注意点
ICTを活用して実施する場合、以下の要件を満たす必要があります。
- セキュリティの確保(ログインパスワードの管理等)
- 本人以外が結果を閲覧できない制限
- 実施者の役割(評価や判定)が適切に果たされる仕組み
50人未満の事業場でも「職業性ストレス簡易調査票」が推奨
これまでのストレスチェックでも最も使用されている「職業性ストレス簡易調査票」が、引き続き50人未満の事業場のストレスチェックでも仕様が推奨されます。集団分析が詳細に実施できるのが特徴です。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-16-「2-5 調査票及び高ストレス者の選定方法の決定」を参照)高ストレス者判定基準となる2つの評価方法
個人の回答結果から、どのような基準で高ストレスと判定し、医師の面接指導につなげるかは非常に重要なプロセスです。ストレスチェックマニュアルでは、主に2つの評価方法が例示されています。
| 判定方法 | 具体的な内容と選定基準 |
|---|---|
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方法1: 合計点数による判定(素点を用いる方法) |
調査票の各質問項目への回答を点数化し、その合計点を基準に用いる方法です。特別なプログラムがなくても計算可能なため、小規模な事業場でも導入しやすい手法です。
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方法2: 尺度ごとの換算点による判定(標準化得点を用いる方法) |
「仕事の量」「イライラ感」「上司のサポート」といった各尺度について、5段階評価に換算し、その平均値や合計値を基準とする方法です。個人のストレスプロフィールの傾向をより詳細に分析するのに適しています。 |
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【選定基準の決定と目安】 いずれの方法を用いるにせよ、最終的な選定基準(カットオフ値)は事業場の実情に合わせて衛生委員会で決定します。一般的には、厚生労働省ストレスチェックマニュアルで例示された点数を設定します。 |
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高ストレス選定のポイント
高ストレス者基準の設定は安全衛生委員会によるストレスチェック調査審議で決定できますが、高ストレス者の中から面接指導対象者を選定(面接指導要否判定)は実施者による確認が必要であることに留意が必要です。
| 判定のポイント | 理由 |
|---|---|
| 心身の反応を重視 | すでに症状が出ている者を確実に把握するため |
| 要因とサポートを考慮 | 症状が顕著でなくても、リスクが極めて高い者を見逃さないため |
| 実施者の判断を介在 | プログラムの自動判定だけでなく、面接指導判定は実施者の確認が必要 |
ストレスチェック結果の通知と同意取得
ストレスチェックの結果は、プライバシーの保護を最優先に扱わなければなりません。
ストレスチェック結果は実施者から個人に直接通知
ストレスチェック結果は、実施者から労働者本人に対し、遅滞なく、直接通知されなければなりません。通知内容には、個人のストレスプロフィール(レーダーチャート等)、高ストレス者への該当有無、及び面接指導の要否が含まれます。通知方法は封書や電子メールなどが想定されますが、他の労働者に内容が推測されないような配慮が必須です。例えば、高ストレス者にだけ特定の封筒を配布するような行為は不適切です。
50人未満の事業場でも実施者から直接通知
ストレスチェックの結果通知は、従業員のプライバシーを確保するという観点から、ストレスチェック制度の工程の中でも最も注意を要します。委託先(実施者)から他者の目に触れないよう、どのように従業員個人へ配布(通知)されるのか、外部機関へのヒアリングやサービス内容説明書にて予め確認しておきましょう。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-18-「3-2 ストレスチェック結果の通知」を参照)事業者へのストレスチェック結果提供
実施者が個人の結果を事業者に提供するには、従業員本人からの結果提供の同意が必要です。なお、本人の同意を得て提供された結果であっても、事業者は健康確保のための就業上の措置に必要な範囲を超えて利用や共有してはいけません。
| 項目 | 具体的な内容・運用ルール |
|---|---|
| 同意取得のタイミング | 結果が本人に通知された後に取得しなければなりません。検査の実施前や実施時に包括的に同意を求めることは、労働者が自分の結果を知る前に判断することになるため、不適当です。 |
| 同意の取得方法 | 書面または電磁的記録により行います。「不同意の申出がない限り同意したものとみなす」というオプトアウト方式は認められません。 |
| 例外(面接指導申し出) |
労働者が医師による面接指導を自ら申し出た場合は、その申出をもって、結果を事業者に提供することに同意したものとみなされます。 ※上記は予め従業員に周知をしておくことが望まれます。 |
高ストレス者への医師による面接指導と就業上の措置
ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定され、面接指導が必要と認められた労働者が希望した場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。
高ストレス者へのストレスチェック結果通知方法例
高ストレス者として判定された従業員には、医師による面接指導を受けることを勧奨します。
この際、他の従業員に高ストレス該当者であることを類推(推測)されない方法を取ることが非常に重要です。
50人未満事業場は医師面接は委託先か地域産業保健センターへ依頼
これまで一般的に高ストレス者への医師による面接指導は、事業場が選任する産業医の先生が担ってきました。産業医選任義務のない50人未満事業場では、ストレスチェック外部機関の医師、もしくは地域産業保健センターの登録医が担うこととなります。高ストレス者が発生してから医師を探すのではなく、予めどこに依頼するかと調整を済ませておき、社内ルールに明記しておくことが望まれます。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-15-「2-3 医師の面接指導の依頼先の選定」を参照)- 紙面通知の場合:ストレスチェック結果とともに高ストレス者には面接指導に関する案内書を封入する 等
- インターネット実施の場合:ストレスチェックマイページに高ストレス者への面接指導勧奨のメッセージを表示/メールで個別通知する 等
50人未満の事業場における面接指導対応の注意点
小規模ストレスチェックマニュアルでは、高ストレス者が医師面談を希望する際の二つのケースと対応が示されています。
- 事業者へ直接申し出る場合:高ストレス者は会社指定의 担当者へ申し出を行いますが、結果の提出は受けず、高ストレス者から医師による面接指導の希望があったことのみを会社は把握することになります。この場合、申し出のあった従業員が高ストレス者に該当するのかについては、委託先(実施者)へ確認しましょう。
- 外部機関へ申し出る場合:高ストレス者が面接指導を申し出しやすくするために、外部機関を経由するケースが考えられます。この場合においても、医師による面接指導の希望があったことは外部機関から会社へ伝わることは、社内ルールに定めておきましょう。

医師からの意見聴取と就業上の措置
高ストレス者への医師による面接指導終了後、事業者は医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して適切な措置を講じなければなりません。この際、あらかじめ当該労働者の意見を聴き、十分な話し合いを通じて了解が得られるよう努めることが重要です。また、措置の内容は産業医等と連携し、プライバシーに配慮しつつ、職場の管理監督者に必要な説明を行う必要があります。
| 医師の意見・措置の項目 | 具体的な内容と運用のポイント |
|---|---|
| 1. 通常勤務 | 通常の勤務でよいもの |
| 2. 就業制限 | 勤務に制限を加える必要があるもの(労働時間の短縮、出張の制限、残業の禁止、作業の転換、就業場所の変更等) |
| 3. 要休業 | 勤務を休む必要があるもの(休暇、休業等) |
|
【事業者が講ずべき措置】 事業者は医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、労働者の実情を考慮して適切な措置を講じなければなりません。この際、あらかじめ当該労働者の意見を聴き、十分な話し合いを通じて了解が得られるよう努めることが重要です。また、措置の内容は産業医等と連携し、プライバシーに配慮しつつ、職場の管理監督者に必要な説明を行う必要があります。 |
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50人未満事業場でも同様の対応が必要
50人未満事業場においても、医師からの意見聴取や、医師の意見によっては当該従業員のプライバシーに配慮しつつ、就業上の措置を行うことが求められます。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-22-「4-3 医師からの意見聴取」、およびページ番号-23-「4-4 就業上の措置」を参照)集団ごとの集計・分析と職場改善(努力義務)
ストレスチェック制度の実施がメンタルヘルス一次予防としての機能を果たす上で、集団分析や職場環境改善活動は極めて重要な役割を持ちます。
50人未満事業場でも集団分析が努力義務化
集団分析は、50人未満事業場においても努力義務とされますが、職場環境改善の手段として利活用が期待されています。集団分析や活用方法については外部機関が情報やノウハウを持ち合わせていることが多いため、サービス内容説明書等で事前確認しておきましょう。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-26-「5 集団分析・職場環境改善」を参照)仕事のストレス判定図による分析
事業者は、実施者にストレスチェックの結果を部署や課などの一定規模の集団ごとに集計・分析させ、職場のストレス要因を評価させることが努力義務とされています。最も一般的な分析手法は、職業性ストレス簡易調査票に基づく仕事のストレス判定図です。これにより、各部署の仕事の量的負担や裁量度、上司や同僚間の支援度、そして健康リスクを数値化し、他部署や全国平均と比較することにより打ち手を検討できるようになります。
10人の制限とプライバシー保護
集団分析の結果は、個人が特定されるおそれがない限り、労働者の同意なく事業者が取得することができます。ただし、集計単位が10人未満の場合、個人の結果が特定されるリスクが高いため、原則としてその集団の全員の同意がない限り、分析結果を事業者に提供することはできません。10人未満の部署については、上位組織(部や課)と合算して分析を行うなどの工夫が必要です。
職場環境の改善への活用
分析結果に基づき、事業者は以下のような改善策を検討します。なお、職場環境の改善は、産業保健スタッフと管理監督者が協力しながら進めることが成功の鍵となります。
- 仕事の量的負担の調整、業務フローの見直し
- 管理監督者に対する教育研修の実施(ラインケアの強化)
- 労働者参加型の職場改善ワークショップの開催
仕事のストレス判定図による集団分析のポイント
| 集団分析のポイント | 詳細 |
|---|---|
| 主な手法 | 仕事のストレス判定図(量・コントロール・サポートの分析) |
| 下限人数 | 原則として10人以上(10人未満は全員同意が必要) |
| 結果の保存 | 5年間保存することが望ましい |
| 法的な位置付け | 努力義務(ただし、実施することが強く推奨される) |
労働者に対する不利益な取扱いの禁止
ストレスチェック制度の信頼性を守り、労働者が安心して受検できるようにするため、法律では事業者による不利益な取扱いを厳格に禁じています。
| 項目 | 具体的な内容・法的規制・禁止事項 |
|---|---|
| 禁止される不利益な取扱いの例 |
事業者は、以下のような行為を行ってはなりません。特に、就業規則等で受検を義務付け、受検しない労働者に懲戒処分を行うようなことは、法の趣旨に照らして絶対に行ってはなりません。 ・受検しないこと、又は結果の提供に同意しないことを理由とした解雇、雇い止め、退職勧奨、配置転換等 ・面接指導の要件を満たしているのに申出を行わないことを理由とした不利益な取扱い ・面接指導の結果を理由として、医師の意見を勘案せず、または合理的な理由なく解雇や配置転換を行うこと ・懲戒処分を行うこと |
| 秘密保持義務の遵守 | 実施者や実施事務従事者には、法第105条により厳格な「秘密保持義務」が課されています。これに違反し、業務上知り得た労働者の秘密を漏らした場合、刑罰の対象となる可能性があります。事業者は事務に従事する職員に対し、この守秘義務の重要性を十分に周知徹底する必要があります。 |
| 出典 | ストレスチェック指針P11-P12、ストレスチェックマニュアルP100-P104、ストレスチェックQ&A問5-1 |
50人未満事業場における不利益取り扱い禁止のポイント
50人未満事業場においても不利益取り扱い禁止については、50人以上事業場のストレスチェック同様、厳しく規定されています。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-30-「8 不利益取扱の禁止」を参照)労働基準監督署への報告義務(ストレスチェック報告書)
常時50人以上の労働者を使用する事業場は、年に1回、ストレスチェックと面接指導の実施状況を、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書として所轄の労働基準監督署長に報告しなければなりません。
ストレスチェック報告内容(心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書・様式第6号の2)
心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書には、以下の内容を記載します。
| 報告書記載項目 | 具体的な内容・詳細 |
|---|---|
| 対象年 | 報告の対象となる年度を記載します。 |
| 検査実施年月 | 検査を実施した月を記載します。実施が複数月にわたる場合は、最終月を記載します。 |
| 常時使用する労働者数 | 実施義務の対象となる「常時使用する労働者」の数を記載します。 |
| 検査を受けた労働者数 | 実際にストレスチェックを受検した実人数を記載します。 |
| 面接指導を受けた労働者数 | 高ストレスと判定された者のうち、実際に医師と面談を行った人数を記載します。 |
| 集団ごとの分析の実施の有無 | 部署やチームごとの集団分析を行ったかどうかを選択します。 |
| 産業医の氏名 | 事業場に選任されている産業医の氏名を記載します。 |
ストレスチェック未実施や報告書を提出しない場合
50人以上の事業場において、ストレスチェックを全く実施しなかった場合でも、労働基準監督署への報告義務は免れません。
ストレスチェック制度を実施しない、あるいは報告を怠った場合には労働安全衛生法違反として指導や罰則の対象となるおそれがあります。
50人未満事業場の労基署へのストレスチェック報告は不要
50人未満事業場においては、50人以上事業場のストレスチェックで課されている労働基準監督署へのストレスチェック報告書(正式名称:心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書)の提出は義務化されません。ただし、労働基準監督署への報告は、常時使用している労働者が 50 人以上の事業場は必要なため、ストレスチェック対象者が選定基準で50人に満たなくても、常用雇用している従業員が50人以上であれば、労働基準監督署への報告義務が生じる点には大きな注意が必要です。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル (PDF:ページ番号-2-「1 はじめに」を参照)派遣労働者や出向労働者、海外勤務者への対応
多様な働き方に応じたルールを正しく理解しておくことが必要です。
| 対象・勤務形態 | 具体的な実施義務と運用の考え方 |
|---|---|
| 派遣労働者 | 派遣労働者に対するストレスチェックの実施義務は「派遣元事業者(派遣会社)」にあります。派遣元は、派遣労働者に対して検査を実施し、必要に応じて面接指導を行う責任を負います。一方、派遣先の事業者は、自社の労働者の集団分析を行う際、職場環境の実態を正確に把握するため、派遣先の労働者と併せて派遣労働者も含めて集計・分析することが「望ましい」とされています。この目的のために派遣先が検査を行う場合は、労働者の負担が重ならないよう配慮が必要です。 |
| 在籍出向労働者 | 出向労働者については、出向元と出向先のどちらに実施義務があるかは、労働関係の実態(指揮命令権、賃金の支払い等)を総合的に勘案して判断します。一般的には、実際に指揮命令を受けて働いている「出向先」で実施することが推奨されます。 |
| 海外勤務者 |
日本の企業から現地に長期出張している社員の場合は、日本の法律が適用されるため、一般の健康診断と同様にストレスチェックを実施する必要があります。 一方で、海外の現地法人に直接雇用されている場合は、日本の労働安全衛生法の適用外となります。 |
ストレスチェックマニュアル50人以上版・50人未満版の比較
2015年12月施行のストレスチェックマニュアルと、2028年までに開始される50人未満ストレスチェックマニュアルにおける比較表です。
| 比較項目 | 50人以上の事業場(現行マニュアル) | 50人未満の事業場(新マニュアル) |
|---|---|---|
| 実施義務 | 年1回、定期的な実施が必須 | 年1回、定期的な実施が必須 |
| 受検義務 | 労働者に義務はないが推奨される | 労働者に義務はないが推奨される |
| 労基署への報告義務 | 毎年、所轄労基署へ報告書を提出(義務) | 負担軽減のため提出不要 |
| 産業医の選任 | 法令で必須(かつ実施者として関与が望ましい) | 不要(外部機関の活用が前提) |
| 衛生委員会の設置 | 必須(ストレスチェックに関する調査審議が必要) | 不要(関係労働者の意見聴取で代替が可) |
適切なストレスチェック運用のためのチェックリスト
事業者が適正なストレスチェック制度運用を行えているかをチェックリストで確認しましょう。
| ストレスチェック制度確認項目 | 主なチェックポイント |
|---|---|
| 周知・規程 |
□ 安全委員会や衛生委員会で調査審議しましたか □ ストレスチェック規程を作成し全社員に周知しましたか(変更があった場合も再周知を実施) |
| 実施者の選任 |
□ 産業医や保健師等、適切な資格を持つ者を実施者にしていますか □ ストレスチェックを外部委託している場合、委託先の実施体制に変更はありませんか |
| 人事権の隔離 |
□ 人事権を持つ者が、実施事務従事者として個人の回答内容を直接扱う事務に関与していませんか |
| 結果の従業員への直接通知 |
□ 結果が実施者から本人へ、他人に見られない方法で直接通知される方法が用いられていますか □ ストレスチェック実施方法やながれを変更した際も、適切なながれで結果通知が行われますか |
| 同意の取得 | □ 事業者が個人のストレスチェック結果を取得する際は、取得前に本人から直接的に同意を得ましたか |
| 面接指導 |
□ 労働者からの面接指導の申出に対して、不利益な取扱いをしていませんか □ 面接指導を申し出た従業員には、直属の管理監督者を含め、周囲はプライバシー保護を徹底していますか |
| 報告書の提出 |
□ ストレスチェック終了後、所轄の労働基準監督署長にストレスチェック報告書(心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書)を提出しましたか □ 複数事業場でストレスチェック報告書の提出が必要な場合、未提出がないか確認できる体制はありますか |
毎年のストレスチェック準備に関するポイント
毎年行われるストレスチェック制度の実施においても、毎年、安全衛生委員会によるストレスチェック調査審議にて、前回のストレスチェック制度や運用の振り返りを行い、当年度のストレスチェック制度の計画にあたります。
ストレスチェック制度への準備に当たっては、先ずは事業者による当年度方針の決定を行います。また、経営トップによるストレスチェック制度への理解と支援の取付けを得ることは、ストレスチェックを有意義な取り組みとしていくためには欠かせません。直近のストレスチェック制度やメンタルヘルス対策の現状、産業医をはじめとする産業保健スタッフや従業員の声等を整理し、上層部の支援を取り付けることをお奨めします。
| ストレスチェック制度:定期的なチェックポイント |
|---|
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□ ストレスチェック受検率の評価:従業員に受検を強要しない方法で、90%を一つの目安としましょう。 |
| □ 集団分析結果を用いた取り組みの評価:特に結果が良好でない職場を分析・改善プランの立案と実行により、確認を継続的に行いましょう。 |
| □ 面接指導後のフォロー:高ストレス者が面接指導を受けた後も、本人の勤務状況やコンディションを確認し、必要に応じてフォローを行いましょう。 |
| □ 実施体制:社内の組織変更やストレスチェック委託先、産業医に変更があれば実施体制を見直し、適切な実施が行えるかを早めに確認しましょう。 |
| □ ストレスチェック内容やながれの改善:従業員が無理なくストレスチェックを受検したり面接指導を申し出できる方法かを定期的に確認しましょう。 |
| ● 産業保健スタッフやストレスチェックを受検した従業員の意見の反映等:産業医や従業員にもストレスチェックに関する意見聴取を行いましょう。 |
ストレスチェック義務化に関するQ&A
ストレスチェック義務化に関するよくある質問をご紹介しています。
なお、ストレスチェック制度関係Q&A解説ページでは、厚生労働省公開のQ&Aに関する説明や解説を行っていますので合わせてご覧ください。
2015年12月から義務化されたストレスチェック制度は、開始から年月を経て、単なる法令遵守の対象から、ウェルビーイングやエンゲージメントへの関心度の高まりも相まって、組織を活性化させるためのツールへと進化しています。ストレスチェック制度を形骸化させず、実効性のあるものにするためには、人事労務担当者、産業保健スタッフ、そして経営層がその目的を正しく共有することが欠かせません。
労働者が安心して自分のストレスに向き合える環境を整えることは、結果として離職率の低下やエンゲージメントの向上を招き、企業の持続的な成長を支える強力な基盤となります。当記事が、ストレスチェック制度の正しい理解と、貴社におけるより良い運用の助けとなれば幸いです。



